2021.02.10『砕け散るところを見せてあげる』cocoオンライン試写
cocoオンライン試写に当選 いつもありがとうございます。久々新作の鑑賞なので楽しみに見てみた~
ネタバレありです! 結末にも触れています!
「高校3年生の濱田清澄は、偶然1年生の蔵本玻璃がいじめにあっているのを見かける。それ以来、彼女のことを気にかけていたが、ある日トイレに閉じ込めれているところを救出。それがきっかけで2人は惹かれあっていく。しかし彼女は大きな問題を抱えていた。」という話。予備知識はほとんどなく見たので、いじめ問題をからめた青春恋愛映画だと思って見ていた。中盤からのまさかの展開にビックリ😲 これはなかなかの衝撃的な作品だった。
SABU監督作品。お名前は存じ上げていたけど、作品を拝見するのは初めて。作品についても毎度のWikipediaは原作の小説の方がメインで、映画の方は簡単な説明とキャスト情報が載っているのみ。竹宮ゆゆこ氏の同名小説が原作で、未読。鑑賞後に原作の感想を書かれたブログ記事をいくつか読ませていただいた感じだと、ほぼ原作通りに映画化されているっぽい。
今作、実は少し仕掛けがある。といっても、映像のない小説だとそのトリックはより効果的で、映画ではそれをそのまま使えないので、変則的な感じになっているのだけど、自分としては小説と似たような衝撃があった。とはいえ、最初から見破る人もいると思うし、仕掛けと気づかなくても見れてもしまう。うーん💦 これどう書こうかな? とりあえず、そのまま書いておく。
冒頭、自室で勉強?している青年(北村匠海)のシーンから始まる。真っ赤な嵐という役名になっているけど、何か言及あったっけ? 見逃しているかもしれない🤔 彼のナレーションで父親のことが語られる。父親は彼が生まれた日に亡くなった。車で病院に向かっていた父親は自動車ごと川に落ちた事故に遭遇する。皆が手をこまねいている中、父親は川に飛び込み次々に救出。しかし、最後の一人である少女を助けた後、力尽き流されてしまった。遺体は傷だらけの状態で数キロ先で発見された。真っ赤な嵐にとって父はヒーローだった。と語った後で立ち上がってヒーローの変身ポーズをする。二階に上がって来た母(原田知世)はそれを何とも言えない表情で見つめている。この後、2人の間に会話があったか忘れてしまった💦
場面変わって朝、学校へ走って来る男子生徒。高校3年生の濱田清澄(中川大志)で、全校朝礼に遅刻して1年生の列に並ぶ。しばらくすると、数人前の女子生徒に対して皆がゴミを投げていることに気づく。長い髪はボサバサで、制服もシワが目立つ女子生徒は、うつむいたままで、皆はますます彼女に対して物を投げている。どんどんエスカレートし清澄の前の男子生徒は上履きを投げようとする。とっさに清澄はこれを止め、朝礼が終わった後、女子生徒に声を掛けて方に触れる。すると彼女は絶叫する。かなりビックリなオープニング。
よく考えると、ここで初めて主人公が登場したわけで、冒頭の青年の語りからの続きがこのシーンなわけだから、清澄が誰なのか気づくと思うし、自分もそのように見ていた気がするのだけど、何故か見ている間にそのことを忘れてしまっていた。そして、エンディングで驚くことになった。特段、ひねりをきかせているわけでもないように思うけど、錯覚したのは脚本や演出の上手さかもしれない🤔
さて、話を戻す! 清澄はあの女子生徒のことが気になってクラスに訪ねて行く。イマドキの高校生がどんな感じなのか、高校を卒業して長い年月が経ち、子どももいない身としてはよく分からないのだけど、3年生が教室に来ているにもかかわらず、女子生徒に対するいじめをやめるわけでもなく、逆に清澄を挑発するような態度。清澄の親友である田丸玄悟(井之脇海)も、今年の1年生は生意気らしいなどと言っていたけど、ホントやな感じ🤨
清澄が介入したとしても素直に止めるわけもないし、辞めたとしても一時のことで、いじめ自体が終わるわけもない。清澄は何回か教室に行っていたように思うけど、女子生徒はいつも1人で下を向いたまま顔も見せずにじっと座っていた。彼女の名前は蔵本玻璃(石井杏奈)で、学校一の嫌われ者とのこと。
ある日、同じクラスの尾崎(松井愛莉)という女子生徒が、清澄が1年のクラスでヒマ先(ヒマな先輩)と呼ばれていると言ってくる。あの女子生徒と同じクラスに妹がいて、いろいろ話を聞いているのだった。この尾崎姉は清澄をオマエ呼ばわりして、単語でしか話さず、毎回ちゃんと話してと清澄に言われて笑える場面となっている。そして、この尾崎姉妹は後のキーマンでもある。
清澄は高校デビューを狙うも、いわゆるイケてる男子生徒たちからは相手にされなかった。とはいえ、田丸など仲のいい友人もおり、それなりに楽しい高校生活を送っている。なので、玻璃を放っておけなかったのだと思われる。さすがに毎日玻璃のクラスに行くわけにもいかないので、せめてとボロボロにされた靴箱をキレイにして、毎日放り出された靴を戻してあげたりしていた。
清澄のこの行動が何かを生み出したわけではないけど、少なくとも玻璃の心には届いていた。とはいえ、それが分かるのはもう少し先になってから。
ある日の放課後、ショッピングセンター?のカフェ?で田丸たちと過ごした後、清澄はトイレに行きたくなり戻ることになる。用を足して出て来ると、女子トイレの前に清掃中の看板があるが、掃除している様子がないのが気にかかる。声を掛けながら入ってみると、掃除用具入れに玻璃が閉じ込められていた。
どうやら閉じ込められただけでなく、上からバケツで4杯も水をかけられてしまい、父親を心配させないために服が渇くまで帰れずにじっと待っていたらしい。この辺りのやり取りは玻璃の少し天然っぽい発言と、それを少し戸惑いながらも真面目に受ける清澄という感じで、結構続く。
玻璃から投げ込まれていた清掃用具入れのカギを受け取り、救出した清澄は、とりあえず近所のクリーニング店に打て行き、店主のおばちゃん(木野花)に事情を説明。玻璃の制服を乾かしてもらう。その間、居間で2人で話をしていると、玻璃は実はとても明るくて素直な女の子であることが分かり、清澄は彼女に興味を持つ。
仕事から帰って来た母親(矢田亜希子)が、食事をしていくように言うと、玻璃は父親が時間に厳しいからと頑なに拒否する。トイレの時と二度繰り返されることで、見ている側も違和感を覚える。
それでも帰り際に明るく、また明日という玻璃に清澄はホッとすると同時に、おそらく彼女に恋し始めている。この辺りまでは玻璃の父親の虐待を疑いつつも、青春恋愛モノだと思っていた。
翌日、おばちゃんから玻璃に渡してほしいと、タッパーに入ったおはぎを託された清澄は、通学路で玻璃を待っている。するとそこに、尾崎の妹(清原果耶)から声を掛けられる。昨日、玻璃をトイレに閉じ込めたとクラス中に連絡があった。さすがにやり過ぎだと思い、友人たちと見に行ったが、既に救出された後だった。助けてくれたのは清澄だろう。今後は、自分はいじめには加担しないと言う。
そこへ玻璃がやって来たので、尾崎妹は彼女にも同じ主旨のことを言う。清澄は玻璃におはぎを渡すと、玻璃は尾崎妹と一緒に登校していく。少し明るい兆しに見ている側もうれしくなるが、そんなに単純ではなかった。
玻璃のクラスで騒ぎがあり、清澄が駆けつけると、数人の男子生徒が、おばちゃんのおはぎを床に投げ捨てて潰し、玻璃に投げつけていた。止めに入った尾崎妹にも投げつけようとする始末。清澄が割って入ると、その背中におはぎがぶつかる。この騒動がどう終わったかあまりよく覚えていない。多分、清澄の背中におはぎがぶつかって切り替わったんじゃないかな?🤔
いつも一方的にいじめを受け止めていた玻璃が、おばちゃんのおはぎを返してと言っているのに、おはぎを踏みつけたり笑ったりしている姿は、本当に醜い。いじめ生徒役の子たちの演技が上手くて、本当に憎らしくなる😠
えーと💦 ちょっと記憶が飛んでしまって、何故そういうことになったのか忘れてしまったのだけど、清澄の母親が車で玻璃を送ることになった。ちょうど田んぼのあぜ道のような所を走っていると、前からスゴイ勢いで車がやって来る。何なのこれ?と慌ててバックする母親。結局、車は止まるのだけど、降りて来たのは玻璃の父親(堤真一)で、清澄のことも清澄の母親のことも目に入らないという様子で、帰りが遅いと玻璃を叱る。何時なのか不明だけど、玻璃の父親の態度は異様。
清澄の母親が自分が引き留めてしまったからと詫びると、初めて存在に気付いたかのような態度で、一応世話になったとお礼は言うものの、心ここにあらずという感じ。清澄の母親は玻璃たちが祖母と3人で暮らしているのかなどと、いろいろ質問する。玻璃の父親が、祖母は病院に入院していると言うと、清澄の母親はどの病院なのかと聞く。イライラしながら答える玻璃の父親。
ちょっと清澄の母親もしつこいなと思うけど、ここで玻璃の父親の怪しさを見せているのだろうし、原作では清澄が母親に頼んで、探ってもらう設定になっているらしい。
この玻璃の父親登場で、映画のトーンがガラリと変わる。顔を上げて清澄たちと明るく話すようになった玻璃は、再び長い髪で顔を隠し、うつむいたままの元の玻璃に戻ってしまう。清澄にも自分には構わないで欲しいと言う。訳が分からない清澄は困惑する。
清澄は母子家庭なので、総合病院で看護師をしている母親が夜勤の時は、家には清澄一人になる。ある夜、玻璃が訪ねて来る。玻璃は清澄が危険だから逃げろと言う。そんな事を言われても、分かったとばかり逃げる人はいない。もちろん清澄もどういうことかと尋ねる。すると、自分の父親は本当に危険なのだ、自分を見れば分かるだろうと被っていたフードを外す。唇は切れて血が出ており、目が腫れ、顔にも痣があった。
玻璃はさらに衝撃的な告白をする。入院していることになっている祖母は、実は父親が殺害して家の前の沼に沈めた。しかも、玻璃もそれを手伝わされたと言うのだった。なんと😱
そんな状況ならば警察、せめてクリーニング店のおばちゃんに相談しろと思うけれど、証拠を見つけようと2人で沼に向かい、スーツケースを発見する。しかし、それは玻璃が手伝って沈めたものではなかった。玻璃は母親は家を出て行ったと聞かされていたが、おそらくこのスーツケースには母の遺体が入っているんだろうと。なんと!😲 そんな事件に発展するのね
警察に連絡しようとするけれど、父親が出かけた隙に急いで抜け出した玻璃は、ケータイを忘れており、電話を掛けるために家の中に入る。すると父親が戻って来てしまう。本性を隠さない父親は、もう完全におかしくて、無表情のまま玻璃を殴り、清澄のこともゴルフクラブで殴り倒す。完全に殺すつもりで何度も頭を殴る。
マジか まさか主人公が殺害される設定 と見ている側が驚いていると、清澄にとどめを刺そうとしていた父親を玻璃が殴り倒す😱😱😱
実は2人が沼に向かう前に、田丸の家に寄り何か(失念💦)を借りるシーンがあった。その際に田丸は、清澄が玻璃に入れ込み過ぎていることを心配し、こちら側にいてくれという主旨のことを言う。田丸が玻璃の父親のことをどの程度知っていたのか不明だけど、清澄と玻璃の行く末に不穏なものを感じたということなのだと思う。
でも、正義の味方でありたいと思う清澄は、ひるむことなく自転車で二人乗りして沼に向かう。玻璃が笑っていることが俺の幸せなんだと言う姿は、自分に酔っている部分もあるのだろうけど、中川大志の爽やかな演技と、目の周りを赤くはらしながも笑顔の玻璃を見ると、こんなシーンではあるけれど、なんとも爽やかで応援したくなってしまう。それだけに、まさかの展開にビックリ😣
図らずも田丸が心配した状況になってしまったわけで、見ている側としては清澄が亡くなってしまったのかと思うけれど、彼の口癖であるヒーローは死なずの言葉通り、重傷を負ったものの後遺症などもなく生還する。あれだけ頭殴られたのに?😳と思うけど、そこはOK
清澄が入院している間に、玻璃は保護され名前を変えて他の土地で別人として生きることになったと、清澄のナレーションで説明される。そしてなんと! その後、2人は偶然再会し結婚したこと、玻璃が子を宿したことも語られる。なるほどそんな展開に!などと思っていると・・・
あの冒頭の転落事故の映像が流れて来る。今日は初めての子の出産予定日なのに、何故こんなことにと思いながらも、正義のヒーロー清澄は必死で家族を救出する。最後の一人である少女は車の中で意識を失っていた。体力の限界を感じながらも必死で車の中に潜る。清澄の心の声は「嫌だなもう」「やりたくないな」と思っている。それでも体は動いてしまう。
うん。きっとそいういうものなのかもしれない。非日常的なことが起きた時に、体が動かなくなってしまうのも、勝手に体が反応してしまうのも、表裏一体であるものなのかなと思う。どちらであっても理屈じゃないのじゃないのかも。誰もが自分を犠牲にしてまで人を助けようと意識しているわけでもなくて、思わず体が動いてしまって、頭ではもう無理だとか、何故自分がこんなことをとか思いながらも、体が動いてしまうのかも🤔 とはいえ、なかなか出来ることではないけど。
結果、人の子を助けて自分の子からは父親を奪ってしまったんだよね。切ないしやるせない。でも、どこか爽やかでもある。そして、冒頭で語られていた"父親"とは清澄であることが分かってビックリ!
そして冒頭のあの母親が玻璃であり、真っ赤な嵐という役名の青年こそ清澄との息子なのだということも分かる。イヤ、普通に見てたら、冒頭の僕の父親はの下りから、次に現れた高校生は冒頭の人物と違うのだから、これから語れるのはその父親の話だと思うハズなのだけど、何故か真っ赤な嵐が語っていた父親とは、清澄の父親のことだと錯覚していた😅
どうやら原作では、真っ赤な嵐が清澄であるように錯覚させるよう仕掛けてあるそうなので、今作でも例えが意図的に清澄の父親がいないことに触れないなど、ミスリードさせる演出はしていると思う。でも、文章では"僕"とか"俺"という一人称を使えば、実は語り手が変わっていることに気づかせないトリックは使えるけど、映像では役者が変わっている時点で別人であることはバレてしまうわけで・・・
とはいえ、例えば北村匠海の後ろ姿しか見せないとか、原田知世は登場させないとか、方法もあるとは思うけれど、特段小細工はしていないのは前述したとおり。なかなか大胆だと思うけれど、それでも少なくとも自分は不思議な感覚になったので、ここは狙い通りなのかもしれない🤔
そして、後から考えると清澄や尾崎姉妹など、制服の感じとか、首に巻いているマフラーなど微妙に時代がズレていること、そして一度もスマホが登場していなかったことに気づく。この辺りも上手い。途中で気づいても面白いし、全部分かってから気づいても興味深い。
キャストは皆良かった。清澄や玻璃の友人を演じた井之脇海や、尾崎妹の清原果耶、尾崎姉の松井愛莉も、見せ場は少ないながらも印象を残した。若い俳優たちを支えるベテラン俳優たちも良かった。堤真一の狂気が凄かった! 普通の会話をしている時でも漂う狂気。ホント怖かった😱
主演2人も良かったと思う。玻璃の石井杏奈は父親から虐待され、学校ではいじめを受けながらも、素直な明るさを失わない姿に希望が持てたし、玻璃にはさらに試練が待っているわけだけど、それもをも乗り越える強さが感じられた。
清澄の中川大志は、下手をすると熱血が空回りして見えてしまう役を、正義感の強い、そして自分の気持ちに正直な好青年にしていたと思う。原作のイメージは不明だけど、中川大志のイケメンだけど、どこかほんわかした容姿が大いにアシストしているように思うので、このキャスティングは良かったのではないかと思う。
なかなか不穏なタイトルだなと思いつつ、青春恋愛モノとして見ていたら、後半堤真一が登場してからはホラーとなり、最後は少しファンタジックに終わる。前述のトリック含めて見応えがあった。内容的に面白いと言ってしまうのは少し気が引けるけど、良い言葉が見つからないので面白かったと素直に書いておく🙂
後半ホラーっぽくなって苦手な人はちょっと怖いかもしれないけど、そこも含めて面白いのでオススメ。石井杏奈ファンの方はちょっと辛いかな? でも、とても良いので是非。中川大志ファンの方必見です🤗
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