まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第3回九州西国霊場めぐり~第5番「天念寺」(修正鬼会の寺)

2021年08月04日 | 九州西国霊場

国東半島をぐるりと回り、ようやくこの旅の本題である九州西国霊場の札所である第5番・天念寺に着く。

駐車場の横にお堂というよりは平屋の家屋がある。ここが天念寺の本堂で、「拝観無料 自由に御拝観下さい」とある。ただ寺としては無住だということで、天念寺の納経はこの先の長安寺で受け付けるという。

天念寺も他の六郷満山の寺と同様に、仁聞菩薩が開いたとされる。寺の本尊は阿弥陀如来で、かつては国宝にも指定されていた。しかし、昭和になって水害で本堂が流され、その再建資金を得るために埼玉県の寺院に売却されたという。後に大分県などによって買い戻され、現在は隣接する「鬼会の里」に祀られているそうだ。後で訪ねることにしよう。

ともかく九州西国霊場としてのお参りはしたが、天念寺の見どころはむしろ現在の本堂以外にあると言っていいだろう。すぐ横にある身濯神社はかつての六所権現社で、ここにも神仏習合の歴史が残されている。

その横に講堂がある。床は板張りだが土足でもOKということで、パッと見たところ荒れたお堂に感じるのだが、むしろこの建物が天念寺のシンボルである。九州西国霊場の本尊である聖観音像も実はこちらに祀られている。

天念寺では毎年旧正月に「修正鬼会(しゅじょうおにえ)」が行われる。前の年の悪を正し、新たな年の五穀豊穣、無病息災を願う火祭りの行事で、僧侶が扮した赤鬼や青鬼が松明を持って講堂内を舞い、かつ暴れ回る。講堂の壁には寄付のお札が貼られていて、また鬼会で使う松明も置かれている。内部が荒れて見えるのも、すごみのある行事の積み重ねによるものだろう。

松明に触れるとご利益があるとされることもあり、例年、修正鬼会は一般の人も参加できるとあって多くの見物客、観光客も集まるそうだが、2021年についてはコロナの影響で関係者のみで行われたという。

寺の前に小川が流れ、その中に岩に刻まれた不動明王像がある。川中不動と呼ばれ、幾度となく氾濫する川による水害防止の願いのために造られたものだという。

そして振り返ると、天念寺の背後は険しい岩峰がそびえる。この一帯は天念寺耶馬と呼ばれている。この峰を伝う道は六郷満山の修行場で、滑落の危険もあるため関係者以外は立入禁止となっている。

その峯をつなぐところに橋が見える。無明橋といい、これも修行者だけが渡ることのできる石橋である。橋そのものはそれほど長くなさそうだが、ああいうところに架けるのは勇気がいることだろう。それも修行の一環だったのかな。

天念寺に隣接して、「鬼会の里」という建物がある。食堂の他に歴史資料館を兼ねているそうで、食堂の人に申し出て入館料を支払い、のぞいてみる。

館内は六郷満山の歴史とともに修正鬼会についても触れられている。その修正鬼会の様子を撮影した映像が見られるということだが、私が訪ねた時は他に客がいなかったためか、あるいはそもそも機器の不調だったのか、映像室に入っても何も上映されなかった。まあ、そこは後ほどYouTubeで見たが、鬼会の最中、講堂の中で松明の炎が焚かれ、見物客を追い回す場面もある。そりゃ、中が煤けて使い込まれたように見えるだろう。

資料館の奥には、かつてよその寺に売却されていた本尊の阿弥陀如来像が祀られている。その他、先ほど触れた無明橋の実物大の模型もある。こうした屋内に置かれている限り何とも思わないが、それが断崖絶壁の境目にあるのだから・・。

また、無料のVR体験で、無明橋の上に立つことができる。私が選んだのは峯入り体験のパターンで、橋のたもとで読経する声が聞こえる。そして振り返るとすぐ背後に僧侶がいて、画像はそのまま無明橋を渡るシーンとなる。VRとはいえ結構スリルを感じたほどだ。峯入りはこの先も続いていくが、道なき道も多いのだろう。

これで天念寺を終え、次は第6番の両子寺に向かうのだが、その前に、無住の寺のため納経を委託された長安寺に向かう必要がある。カーナビで検索してもそれほど離れているわけではなさそうだ。おまけに、実施の標識にしたがって走るとカーナビとは逆方向に向かい、そしてカーナビに載っていない道を走り始めた。私のクルマのカーナビも結構古いし、これから走る道も脇道と見なして案内しないのかもしれない。

ゴールは少しずつ近づくが、軽自動車のために上り坂でエンジンもうなりだす。まあそれでも多少は時間短縮になったかなと、長安寺の標識を見てほっとするのであった・・・。

コメント