8月22日、1日だけ空きがあるのでどこかに行くことにする。前週(8月14日~15日)大雨のために延期した中国四十九薬師めぐりの続き、あるいは中国地方のローカル線乗車ということも考えたが、芸備線の東城~備後落合間などで運休している。
中国地方のローカル線といえば木次線があり、「奥出雲おろち号」が運転されている。ただ、2023年度での運行休止が公表されているためなのか、とにかく指定券が取れない。JRのe5489で「1ヶ月と5日前」の事前申し込みで上下列車の予約にも挑戦したが、両方外れたこともあった。どんだけ人気やねん。
その一方で、山口線の「DLやまぐち号」の記事を見つけた。この春、検査中のSLに代わってDD51が牽引する「DLやまぐち号」が運転されているが、限定日でDE10の重連運転が行われるという。もともと、8月1日~15日での運転だったが、大雨による運休が続いたため、8月21日、22日、29日も追加で運転するとあった。DE10が重連で運転するのは今回が初めてとのこと。そこで22日の空席を検索すると空きがあったので、新山口からの席を確保した。普通車であれば青春18きっぷでも利用可能だ。
さて8月22日、西広島から山陽線に乗車し、岩国に到着。このまま山陽線に乗るところだが、「DLやまぐち号」の発車までは余裕があるので、岩徳線経由で行くことにする。少し時間があるので駅前に出る。この日も時折雨が降る予報で空はどんよりとしている。
折り返しとなる7時19分発の岩徳線経由徳山行きが到着。沿線で倒木があったとかで数分遅れての運行である。キハ40の2両編成で、2両合わせて10人ほどの客で出発。観光列車ではない一般車両で走るのも少しずつ貴重なものになりつつある。ボックス席の前に足を伸ばしてくつろぐ。
川西の先の信号場で錦川鉄道と分かれ、欽明路のトンネルを抜ける。クルマで広島から徳山方面に行くならば欽明路経由が最短距離で、山陽自動車道もこの辺りを通っているのだが、鉄道ではローカル区間である。もともと山陽本線として開通したが、複線化にあたり勾配やカーブ、そしてトンネルをもう1本掘らなければならないことがネックとなって、複線化は柳井回りで実施された。山陽本線の名称も柳井回りに譲り、こちらは岩徳線としてローカル輸送を担うことになった。もっとも、山陽新幹線ができた際は運賃計算キロは岩徳線経由のものが適用されたのだが。
沿線の駅にはかつての幹線の名残も残されている。今は線路も撤去されているが、行き違い用の長いホームがそのまま残されている駅もある。例えば今、それこそ「DLやまぐち号」のような列車を岩徳線で走らせることはできないかなと思う。
岩国を出た時は数分遅れていたが、途中の周防高森での行き違い停車の間にダイヤは正常に戻った。徳山が近づくにつれて少しずつ乗客が増え、8時49分、徳山に到着。
ホーム向かい側に停車中の8時52分発の下関行きに乗り継ぐ。あいにくの天候で、富海あたりの周防灘の車窓もぐずついている。
さて、この列車の行き先表示は下関と出ているが、8月12日からの大雨で山陽線の厚東~厚狭間は運休が続いている。そのためこの列車も厚東止まりとなり、厚狭までは代行バスが運転されている。また、新山口~厚狭間で新幹線による振替輸送が行われていて、8月13日以前購入分であれば青春18きっぷでも同区間の自由席を利用できるそうだ。
8月中旬の大雨で、また各線に運休等の大きな影響が出ているが、それほどニュースには出てこないが貨物列車の輸送に大きな支障が出ている。広島・新南陽~北九州・福岡間でトラックによる代行輸送が行われているとはいえ、通常時の輸送力と比べると限定的でしかない。貨物列車といえば大量輸送、定時運行、環境にやさしい・・というので最近見直されているが、この数年では「災害に弱い」という弱点が目立っている。
9時34分、新山口に到着。厚東止まりとなる下関行きは10時09分まで停車する。「DLやまぐち号」は10時50分発と1時間以上待ち時間があるが、次の山陽線の列車だと発車10分前の到着と慌ただしい。
ちょうど、これから「DLやまぐち号」を牽引するDE10機関車が2両連結されて停まっている。周りにはカメラやスマホを手にした人たちが撮影中。こうした連結を見るのも貴重な機会である。しばらくして誘導の係員が先頭部に乗り込んで、機関庫へと回送されていった。この後、客車を押し込んで入線してくるのでしばし待つことにしよう。
改札口には山陽線の運休に関する情報が出ていた。厚東~厚狭間には宇部、小野田とそれぞれ宇部線、小野田線が接続しており、それらの線にも一部影響が出ている。運転再開は9月上旬とあるが、果たして順調に行くだろうか。
垂直庭園がある自由通路を抜けて、いったん新幹線口(南口)に向かう。これから新幹線に乗る観光客らしい姿も目につく中、無料のPCR検査場も開かれている。
駅前に降り立つと出迎えるのは種田山頭火の像。昨年来た時は駅前の改修工事のため柵が設けられていたが、今はこうして近づくことができる。「まったく 雲がない 笠をぬぎ」の句がある。防府出身の山頭火は、私も今年新たな札所めぐりとしている九州西国霊場を歩いたとして、同霊場のPRに登場している。私もこの先めぐるにあたり、一言ご挨拶を・・。
自由通路では「山口ゆめ回廊博覧会」開催の看板が出ている。全く知らなかったのだが、今年の7月1日~12月31日の開催で、どこかのパビリオンで開催される博覧会というよりは、観光キャンペーン、各地でのイベント開催のようだ。山口県中部の7つの自治体(山口市、宇部市、萩市、防府市、美祢市、山陽小野田市、島根県津和野町)を舞台に、7つの回廊(芸術、祈り、時、産業、大地、知、食)をテーマとしてさまざまなイベントや体験、ツアーなどが開催されるとある。
新山口の在来線側(北口)には、この博覧会の「7つの自治体」、「7つの回廊」を七福神に見立てた宝船のオブジェが飾られている。よく見ると船体にも山口県にちなんださまざまなものがあしらわれている。機会があれば何か参加してみようかな。
そろそろ「DLやまぐち号」も入る頃だろう。ホームに向かうことにする・・・。