「リンカーン」
今年のアカデミー賞で最多ノミネートされた、スティーブン・スピルバーグ監督作品。
1865年、アメリカを内戦状態に追い込んだ南北戦争は4年目に突入。大統領に再選されたエイブラハム・リンカーンは、奴隷制度を廃絶するという自らの理想のため、多くの若者たちが戦場で命を散らしている現実に苦悩していた。憲法修正に必要な票を獲得するための議会工作に乗り出すリンカーンは、息子のロバートが北軍への入隊を志願していることを知り…
南北戦争を描いた壮大なるドラマ、リンカーンの激動の人生、を描いたドラマティックな映画かと思ってたのですが、ぜんぜん違ってて驚きました。政治家たちの憲法改正をめぐっての駆け引きや裏工作を重厚に、熱っぽく描いた内容でした。「風と共に去りぬ」を観た程度しか南北戦争については知らなかったので、奴隷制度撤廃の裏話はとても興味深かったです。池上さんの番組じゃないけど、そうだったのか!みたいな。でも…勉強になったけど、政治ドラマよりも、人間ドラマのほうにもっと焦点を当ててほしかったかも。リンカーンは有名ですが、日本ではそんなに馴染みのない偉人だし、アメリカの歴史にも詳しくないので、憲法や選挙システムを知ってることが前提な内容に、ついて行けなくなることもしばしば。真面目で清廉すぎる内容も、かなり優等生的で堅苦しかったです。舞台劇のようで、ちょっと閉塞感も覚えました。華やかで波乱万丈な歴史ドラマが好きなので…
議会で議員たちが繰り広げる白熱の議論、が映画のほとんどを占めてたような気が。おじさんたちが舌鋒鋭く、激しく感情的に攻撃、罵り合う姿は、朝まで生テレビみたいで楽しかったです。でも私、老け専・枯れ専じゃないので、やっぱおっさんより若い男前、イケメンのバトルのほうが萌えますわ
この映画最大の見所は言うまでもなく、スピルバーグ監督に懇願・切望されてリンカーンを演じ、オスカー史上初、3度目!の主演男優賞を獲得した、映画界の至宝ダニエル・デイ・ルイスです。
目を奪う息をのむ大熱演!とは、また違うんですよね。DDLは、そんな類の俳優じゃないんだよなあ。とにかく、静かで深いんです。見た目も内面も、怖いほどの憑依的な役作りなんだけど、フツーに演技が巧い男優と違い、頑張ってる感バリバリで暑苦しく押し付けがましい熱演になってしまわないところが、DDLの素晴らしいところ。どんな役を演じても、雰囲気、オーラが神秘的で高貴なんですよね。これって、どんなに演技が巧くても他の男優では、絶対に醸し出せない。気品と威厳あるたたずまいが美しい!指先とか、小さな部分の動きさえ美しい!声も美しい!魔法のような声で、あんな風に優しく熱をこめて説得されたら、そりゃ誰だって折伏、マインドコントロールされちゃうよ。人事を尽くして天命を待つ姿の重々しさだけでなく、穏やかで紳士的でユーモアがあって、ちょっと不思議さん入ってる(議論吹っかけられたり要求されたりしても即答せず、関係なさげなお話を始めたり)リンカーンを、ミステリアスに品よく演じていたDDLです。これまでのオスカー受賞作「マイ・レフトフット」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」を経て、もはや前人未到の深く高い境地へと到達してしまった感のある、現代最高の名優DDLの偉大さを知らしめる映画です。次はどんな作品が、滅多に働かないDDLに重い腰を上げさせるでしょうか。
助演の俳優たちも、印象的な好演と熱演。地味だけど堅実な俳優たちが演じた政治家の中では、やはりオスカーにもノミネートされたトミー・リー・ジョーンズが傑出してた。日本ではすっかりBOSSの人として認知されてる彼ですが、現れるだけでドーン!という効果音が聞こえてきそうな強烈な存在感です。ヅラをとったらツルッパゲなのが笑えた。リンカーンの妻メアリー役は、2度のオスカーに輝く大女優サリー・フィールド。彼女の神経症ちっくな鬼嫁ぶりもインパクトあり。今年のオスカー授賞式で、司会のセス・マクファーレンとオバカなコントやってた、大物なのにノリがよすぎるサリーおばさんも素敵でした。
リンカーンの息子ロバート役のジョセフ・ゴートン・レヴィットが、カッコカワイかった
彼って、どんな映画でも初登場シーンは、あ!ヒース・レジャー?!とドキっとさせるんですよねえ。ほんと似てるわ。見た目だけでなく、感受性が強く繊細そうなところも似てるし。ヒースよりも、メンタルは強そうで明るくオフビートな感じですが。あんまし出番と見せ場がなかったのが、ちょっと残念。彼も今年のオスカー授賞式では大活躍でしたね。踊ってる時のニコニコ笑顔が超可愛かった!
あと、美術も素晴らしかったです。議事堂内とか屋敷とか街並みとか、セットとは思えないほど。さすが巨匠スピルバーグ監督のハリウッド映画。金のかけかたがハンパない。金同様、ハリウッドの威信もかかった作品です。日本の大河ドラマや韓流時代劇とは、やっぱ違います。オスカー美術賞も納得。
↑ダニエル・デイ・ルイス、オスカーの歴史。気高く優しく深く。美しく年齢を重ねる見本のようですね
↑ヒース・レジャー、たまに井浦新とカブるジョセフくん
今年のアカデミー賞で最多ノミネートされた、スティーブン・スピルバーグ監督作品。
1865年、アメリカを内戦状態に追い込んだ南北戦争は4年目に突入。大統領に再選されたエイブラハム・リンカーンは、奴隷制度を廃絶するという自らの理想のため、多くの若者たちが戦場で命を散らしている現実に苦悩していた。憲法修正に必要な票を獲得するための議会工作に乗り出すリンカーンは、息子のロバートが北軍への入隊を志願していることを知り…
南北戦争を描いた壮大なるドラマ、リンカーンの激動の人生、を描いたドラマティックな映画かと思ってたのですが、ぜんぜん違ってて驚きました。政治家たちの憲法改正をめぐっての駆け引きや裏工作を重厚に、熱っぽく描いた内容でした。「風と共に去りぬ」を観た程度しか南北戦争については知らなかったので、奴隷制度撤廃の裏話はとても興味深かったです。池上さんの番組じゃないけど、そうだったのか!みたいな。でも…勉強になったけど、政治ドラマよりも、人間ドラマのほうにもっと焦点を当ててほしかったかも。リンカーンは有名ですが、日本ではそんなに馴染みのない偉人だし、アメリカの歴史にも詳しくないので、憲法や選挙システムを知ってることが前提な内容に、ついて行けなくなることもしばしば。真面目で清廉すぎる内容も、かなり優等生的で堅苦しかったです。舞台劇のようで、ちょっと閉塞感も覚えました。華やかで波乱万丈な歴史ドラマが好きなので…
議会で議員たちが繰り広げる白熱の議論、が映画のほとんどを占めてたような気が。おじさんたちが舌鋒鋭く、激しく感情的に攻撃、罵り合う姿は、朝まで生テレビみたいで楽しかったです。でも私、老け専・枯れ専じゃないので、やっぱおっさんより若い男前、イケメンのバトルのほうが萌えますわ
この映画最大の見所は言うまでもなく、スピルバーグ監督に懇願・切望されてリンカーンを演じ、オスカー史上初、3度目!の主演男優賞を獲得した、映画界の至宝ダニエル・デイ・ルイスです。
目を奪う息をのむ大熱演!とは、また違うんですよね。DDLは、そんな類の俳優じゃないんだよなあ。とにかく、静かで深いんです。見た目も内面も、怖いほどの憑依的な役作りなんだけど、フツーに演技が巧い男優と違い、頑張ってる感バリバリで暑苦しく押し付けがましい熱演になってしまわないところが、DDLの素晴らしいところ。どんな役を演じても、雰囲気、オーラが神秘的で高貴なんですよね。これって、どんなに演技が巧くても他の男優では、絶対に醸し出せない。気品と威厳あるたたずまいが美しい!指先とか、小さな部分の動きさえ美しい!声も美しい!魔法のような声で、あんな風に優しく熱をこめて説得されたら、そりゃ誰だって折伏、マインドコントロールされちゃうよ。人事を尽くして天命を待つ姿の重々しさだけでなく、穏やかで紳士的でユーモアがあって、ちょっと不思議さん入ってる(議論吹っかけられたり要求されたりしても即答せず、関係なさげなお話を始めたり)リンカーンを、ミステリアスに品よく演じていたDDLです。これまでのオスカー受賞作「マイ・レフトフット」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」を経て、もはや前人未到の深く高い境地へと到達してしまった感のある、現代最高の名優DDLの偉大さを知らしめる映画です。次はどんな作品が、滅多に働かないDDLに重い腰を上げさせるでしょうか。
助演の俳優たちも、印象的な好演と熱演。地味だけど堅実な俳優たちが演じた政治家の中では、やはりオスカーにもノミネートされたトミー・リー・ジョーンズが傑出してた。日本ではすっかりBOSSの人として認知されてる彼ですが、現れるだけでドーン!という効果音が聞こえてきそうな強烈な存在感です。ヅラをとったらツルッパゲなのが笑えた。リンカーンの妻メアリー役は、2度のオスカーに輝く大女優サリー・フィールド。彼女の神経症ちっくな鬼嫁ぶりもインパクトあり。今年のオスカー授賞式で、司会のセス・マクファーレンとオバカなコントやってた、大物なのにノリがよすぎるサリーおばさんも素敵でした。
リンカーンの息子ロバート役のジョセフ・ゴートン・レヴィットが、カッコカワイかった
彼って、どんな映画でも初登場シーンは、あ!ヒース・レジャー?!とドキっとさせるんですよねえ。ほんと似てるわ。見た目だけでなく、感受性が強く繊細そうなところも似てるし。ヒースよりも、メンタルは強そうで明るくオフビートな感じですが。あんまし出番と見せ場がなかったのが、ちょっと残念。彼も今年のオスカー授賞式では大活躍でしたね。踊ってる時のニコニコ笑顔が超可愛かった!
あと、美術も素晴らしかったです。議事堂内とか屋敷とか街並みとか、セットとは思えないほど。さすが巨匠スピルバーグ監督のハリウッド映画。金のかけかたがハンパない。金同様、ハリウッドの威信もかかった作品です。日本の大河ドラマや韓流時代劇とは、やっぱ違います。オスカー美術賞も納得。
↑ダニエル・デイ・ルイス、オスカーの歴史。気高く優しく深く。美しく年齢を重ねる見本のようですね
↑ヒース・レジャー、たまに井浦新とカブるジョセフくん