まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

問題のあるホテル

2015-06-14 | 北米映画 80s~90s
 My Favorite 80年代映画②
 「ホテル・ニューハンプシャー」
 高校教師のベリーは、家族とともに念願だったホテル経営を始める。次々と降りかかる不幸や災厄を、ベリー一家は明るく逞しく乗り越えていくが…
 「ガープの世界」や「サイダーハウス・ルール」などのアメリカの人気作家、ジョン・アーヴィングの小説の映画化。私も多感な年頃に、アーヴィングにハマってたんですよね~。ファンタジックなまでに波乱万丈、奇想天外なストーリーは、常に死と暴力に満ち溢れてて、悲劇や凶事がこれでもか!とばかりに起こるけど、決してお涙ちょうだいにはならない突き抜けた明るさがあって、アメリカ人のタフさとかポジティヴさに感銘を受けたものです。

 この家族ドラマもアーヴィング節が炸裂してて、とにかく珍事変事凶事いろんなことが怒涛のように起きて、ジェットコースターのように一気に走る抜ける展開なので、長い話だけどアっという間にラストにたどり着いてしまいます。

 近親相姦、同性愛、いじめ、レイプ、事故死、テロや失明、自殺など、ベリー一家には問題だらけ、不幸・悲劇の嵐。なのに、すごいあっけらかんとしてるんですよ。みんなノーテンキで元気なんです。フツーの人なら立ち直れない、トラウマになるような経験をしても、落ち込んで沈んで立ち止まったりしないんです。劇中の台詞『開いてる窓は見過ごせ』、どんなに悲しいこと辛いことがあっても生きていこう!というテーマが心に響きます。
 リアルな悲劇と不幸を描いても、どこかおとぎ話のような語り口が独特。曲芸をするクマの“メイン州”や、オナラばかりしてる犬のソローが、人間以上に生と死について考えさせる存在になっているところも、哀しいフェアリーテールっぽさを醸しています。

 とにかく、ベリー一家の強さ、明るさ、前向きさが人間離れしてて驚嘆ものです。どんなに踏みつぶされても、したたかに元気に執念深く生きる雑草のような人たちなのです。優しいけど夢中人なパパ、長男はホモ、長女と次男は愛し合ってて、次女は小人。強烈な個性のファミリーが、仲良く楽しそうに不幸や悲劇と向き合う姿が、コミカルにドラマティックに描かれています。不幸や悲劇にも、必死に涙ながらに!なんて悲壮感は微塵もなく、サラっとシレっと負けないところが笑えます。そんなベリー一家や彼らに関わる人々を演じてる俳優たちが、なかなか豪華です。

 家族の中心である長女のフラニー役、ジョディ・フォスターの貫禄ときたら!当時まだ20代前半なのに、すでに姐御、いや、親分な風格です。風貌もキャラも、まさに“漢(おとこ)”な頼もしさ。実姉と愛し合う弟、実質の主役である次男ジョン役のロブ・ロウは、まだ少年っぽさが残ってて可愛い。この映画でもよく脱いでました。パパ役のボー・ブリッジスは、弟のジェフほど男前ではありませんが、優しそうで知的な素敵おじさま。
 最も強烈で美味しい役だったのは、後半のウィーン編になって出てくる二代目“メイン州”、クマのスージー役のナスターシャ・キンスキー。

 超美女のナスターシャが、かぶりものをしてその美貌を隠してる!というところが、なかなか小粋な配役。ジョディ兄貴とレズシーンもあり。最近レズであることをカミングアウトしたジョディ兄貴、ロブ・ロウとよりもナスターシャとのラブシーンのほうがノリノリだったんだろうな
 あと、フラニーをレイプする性悪ハンサム高校生役と、ウィーンのテロリスト役の二役を演じてるマシュー・モディンもイケメン、好演。
 今は亡き名匠トニー・リチャードソン監督のユニークな演出、心に残る映像美、流麗な音楽なども素晴らしいです。
コメント
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