まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

BLセブンティーン

2017-08-16 | フランス、ベルギー映画
 「Quand on a 17 ans」
 高校のクラスメート同士であるダミアンとトマは、互いに反感を抱き合っていた。そんな中、トマの養母が病気で入院する。ダミアンの母で医師のマリアンヌは、トマを一時預かることに。突然の同居に、トマとダミアンは戸惑うが…
 以前から観たかったフランス映画。名匠アンドレ・テシネ監督作品です。本国ではコンスタントにテシネ監督の新作は公開されているのに、日本ではとんと途絶えてしまっているのが悲しい。「私の好きな季節」などテシネ監督の作品で描かれる、恋愛の形や家族の関係が好き。複雑で繊細な機微がいかにもフランス的だけど、決して芸術映画きどりのワケワカメさがなく、驚かされると同時に共感できることも多い。そして、ほとんどの作品はフランスの大物女優と無名だけど魅力ある若いイケメンが主演、というのも美味しい。さらに、同性愛が物語の重要なエッセンスになっていることが多い、という点も気になるテシネ監督作品なのです。この作品なんて、ズバっとBL映画

 上質のBL漫画みたいな佳作でした。コソコソ楽しんでいた昔と違い、BL漫画や映画は日本でも市民権を得ている現在。「怒り」や「無伴奏」など、挑戦的なBL描写がある邦画も最近は珍しくありません。でも、さすがというか、フランスのほうがやはり格段にBL先進国です。人気イケメン俳優がちょこっと脱いだり絡んだりするのとは雲泥の差がある、大胆で生々しいBLシーンに瞠目せずにいられません。でも、何かBL=特殊、みたいな邦画と違い、フランス映画のBLは男女の恋愛と同じ自然さ。そういうところも大人な国だな~と感嘆するばかりです。

 この映画、BL物語だけど、ラブシーンはほとんどありません。ラストに一回だけ。その最初で最後のセックスシーン、それまでの鬱屈や情欲のぶつかり合いのような激しさ、濃密さ。こういうシーン観るたびに思うけど、俳優さん大変だろうな~。ホントにヤってるとしか思えないリアルさ。最中にも終わった後にも、大事なところを隠してる不自然さがない。ボカシも何もないのが、返ってイヤらしくないんですよね~。

 はじめは意味も理由もなく反目し合ってた(こういうのが、いかにも混沌とした思春期の少年らしい)ダミアンとトマが、同居を機にだんだん仲良くなっていき、やがて…みたいな関係が、ビタースウィートに描かれています。それにしても。二人が仲良しになるきっかけとなったのが、山の中でのタイマン!まるでヤンキー少年漫画なノリ。フランスの男の子もあんなことするんですね~。深刻な苦悩や悲劇も起きるけど、湿っぽくも暗くもならず、瑞々しく爽やかな印象が残る映画になってます。ハッピーエンドだったのも好感。
 ダミアンとトマのキャラも、それぞれ個性的でチャーミングでした。ダミアンは見た目からしてモロにゲイなんだけど、言動は全然キャマっぽくなく、むしろ格闘技を練習してたりと猛々しい。それはゲイであることゆえの心理的武装にも思えて、けなげで切なかった。トマは、とにかくミステリアスで複雑。何を考えてるのかわからない、本人にもわからない、心と体を持て余した葛藤やモヤモヤが、蒼い思春期の少年って感じ。ダミアンに冷たくて優しいツンデレっぷりにも、腐萌え~。二人とも学校では群れず孤高でトンがってるけど、母親には超優しいところが可愛かったです。

 ダミアン役は、「HOME 我が家」でイザベル・ユペールの息子役を演じてたケイシー・モッテ・クライン。成長しましたね~。ちょっと新スパイダーマンのトム・ホランド似?イケメンではないけど、ゲイのリアルさ繊細さがよく出てた名演でした。撮影当時、実際にも17歳だったというケイシー。17歳の男の子があんなシーン!するほうも、させるほうもスゴいわ。日本ではありえない!トマ役のコランタン・フィラは、ケンブリッジ飛鳥をさらに凛々しく鋭利にした感じの美青年!さすがイケメン発掘の名人テシネ監督、またまた上玉を掘り出しましたね~。パリにいても目立つような美貌が、ド田舎の中ではさらに際立ち、異彩を放っていました。セックスシーンだけでなく、すっぽんぽんになって湖で寒中水泳とか、脱ぎっぷりもあっぱれでした。
 マリアンヌ役のサンドリーヌ・キベルランも好演。決して過干渉はせず、でも理知的に優しく少年たちを見守ってくれる理想のママン、素敵な女性でした。トマとエッチしちゃう淫夢を見てしまうなど、生々しい女なシーンが意味深で興味深かったです。脱がなくてもいいシーンなのに平気で脱いだりするところが、さすがフランス女優。ダミアンの単身赴任中の軍人パパ役が、テシネ監督の「溺れゆく女」で注目されたアレクシス・ロレ。おじさんになったけど、可愛さは不変。ダミアンとは父子というより年の離れた兄弟みたいだった。
 舞台となったピレネー山脈のふもとにある田舎町の風景が、雪深い冬、緑豊かな夏など四季のうつろいの中で美しく撮られていました。ああいうところで暮らしてみたいな~。
コメント (7)
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