まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

ミャンマー祈りの旅⑤ 穢土厭離の午後

2017-08-27 | 旅行、トレッキング
 ヨースケが絶対の自信をもって断言した、ヤンゴンで最も面白い場所、美しい風景とは?ヤンゴンの波止場から約20分ほどで、船は目的地に到着。いったいどこ?不安に心揺れながらも、笑顔のヨースケに手をとられて船をおり上陸しました。当時は知らなかったのですが、正確には島ではなく、船を使わないと行けないダラというヤンゴンで最貧の地域でした。周りを見回しても、ポツンと廃屋があったり、貧しい身なりの人たちが歩いてたり、特にこれといって何もない寂しい風景。私の不安もお構いなしに、ヨースケはバイクで観光案内する!と、私の返答を待たずにさっさと知り合いっぽい二人組の少年に声をかけ、彼らのバイクでレッツゴー!なノリ。ええ~…と私は気が乗らなかったのですが、もう断れない流れになってしまい、ええい、ままよ!と日本では絶対ありえない危険を犯すことに。真っ黒で無表情な少年二人はそれぞれのバイクの後ろにヨースケと私を乗せて出発したのでした。

 付き合ってた男の原チャリ以来でしょうか、男の後ろに座ってバイクに乗るのは。当然、あの頃のような甘~い気持ちにはなれません。かなり乱暴な運転、でも気軽に少年にしがみつくわけにもいかず、とにかく振り落とされぬよう必死。目に映るのは、やはり忙しく乱暴に行きかうバイクや、廃屋のような建物、のんびり歩いてたり店番をしてたりする人々。ヤンゴンにはたくさんいた西洋人の姿も皆無。中国人や韓国人、インド人さえも見当たらない。
 日本の夏ほど暑くはないのですが、陽射しは痛いほど強く、肌を気にする日本人にはかなり過酷。ああ日焼け止め塗り直したい~と気をもんでたら、バイクが雑貨屋さんの前で停車。店で煙草を買ったヨースケは、私を椅子に座らせるとおもむろに何かを顔に塗り始めました。そう、ミャンマーといえばのタナカです。得体の知れぬものを肌に、しかも顔に塗るなんて。かなり不安でしたが、ベタベタ感がなく意外とサラっとした塗り心地。はっきりと何かを塗っている真っ白さが、返って厚化粧より潔さが。優しくタナカを塗ってくれるヨースケが、もしタイプのイケメンだったら、さぞやドキドキだったことでしょう。タナカは店のお爺さんからのサービスで無料でした。

 やがてバイクは、とんでもない場所へと私を連行したのでした。TVでよく見る、アフリカの貧民街みたいな集落。粗末な身なりをした、中には原始人みたいな風貌の人たちが、不意に現れた異国人の私を無関心そうに見てる。まさに弥生時代の掘っ立て小屋みたいな家が密集し、その暗さ不潔さといったら筆舌に尽くしがたいほど。異臭もキツい。汚い豚小屋のすぐそばで、生まれたばかりっぽい赤ちゃんが寝てる。野犬がうようよウロウロしてる。足元も悪く、え?!何これ?!な異物も転がってたり。

 ど、どこが美しい、面白い場所だよ!と、ニコニコと住民に声かけてるヨースケに面罵したくなりましたが、私など1日たりとも生活できそうにない、信じられないような不衛生で劣悪な環境で暮らしている人々は、私が覚えた数少ないミャンマー語のひとつである『ミンガラバー(こんにちは)』と声をかけると、恥かしそうに微笑みミンガラバーと返事をしてくれる。子どもたちは人なつっこく、私が突っ立てると近づいてきたり。外国人への警戒心とか反感めいた雰囲気はなく、シャイだけどフレンドリーなところはヤンゴン中心部の人たちと同じ。可愛らしい子どもたちを見てると、私がどれだけ恵まれた幸せな生活をしているかが骨の髄まで思い知らされ、日々の不平不満を反省せずにはいられませんでした。

 学校もなく仕事もなく、その日ぐらしだという人々の様子を暗澹とした気持ちで観察してる私に、『善いことをしませんか?ドネーションしませんか?』とヨースケが私に提案。ここの人たちのために、お米を買ってほしいとのこと。ははあ、これが目的かと苦笑しながら得心。でも、生であのような極貧を目の当たりにすると、いくら冷血人間の私でも何かしてあげたいと思わずにはいられません。再びバイクに乗せられ、お米を売ってる店に連れていかれる。ものすごくデカい米俵を買わされました。65000K(約6500円)の出費。まあ、これでちょっとでも人助けになるのなら…

 再び集落に戻り、ヨースケとバイク少年たちがお米を小分けにして住民にふるまいます。私からの寄付、とヨースケが住民たちに伝えると、ふーんみたいな無関心そうな反応でしたこれぐらいで涙を流して喜ぶと思うなよ、上から目線な哀れみで気持ちよくなるなよ、と言われたみたいでした。よく見ると、大人たちはアイスクリームを食べてます。どこで売ってたんだろ?ていうか、冷蔵庫なんかどこにもなさそうだったけど。

 お米を配り終えた後、バイクで小さな寺院に立ち寄りました。ミャンマーの寺院では、どこでも靴を抜いて裸足にならないといけないので、神経質な人にはちょっとしんどいかも。遊んでいた中学生ぐらいの男の子たちが笑顔で話しかけてきますが、英語はまったく通じずヨースケの通訳でおしゃべり。タイからの観光客である家族連れもいたりしました。寺院の中には年若い僧侶たちが暮らす建物があって、半裸で行水してたり。ヨースケも小さい頃、数年間ここで修行したことがあるらしく、なかなか厳しく辛い日々だったと話してくれました。ミャンマーの貧しい家の男の子は、学校ではなくお寺で読み書きや最低限の教育を受けるらしいです。

 夕方に近づいてきて、ツアーも終了。ここでお会計。思ってたより請求されて、ぼったくりに近い不当さだったけど、ここで争ったら絶対ヤンゴンには帰れなくなる、へたすりゃ豚のエサにされちまう危険性があったので、逆らわず支払います。帰りは大きなフェリーに乗りました。元は日本の会社の船で、何と日本人は無料!ヤンゴンには10分ぐらいで到着。

 まだ何かついてこようとするヨースケに、ありがと!さよなら!ときっぱりと笑顔で通達して、逃げるように私は暮れなずむヤンゴンの雑踏の中にまぎれたのでした。大した額ではないとはいえぼったくられたのは悔しかったけど、無事だったし貴重な経験もできたので、まあヨシとしよう。後日調べたところ、ダラはミャンマー屈指の危険地帯で、観光客への非道いぼったくりが問題になってるとか。身の危険は感じませんでしたが、用心がかなり必要な場所であることは確かです。ダラに行かれる予定のある方は、くれぐれもご注意あそばして!

 さあ、気を取り直してヤンゴンの街を歩こう♪ちょっと涼しくなった夕方、スーレーパヤーの前は相変わらずスゴい人・人・人!バスや車の運転も乱暴で、めっちゃカオスです。現地人にまぎれて、私も恐々と道路を横断。お腹はそんなにすいてないけど、疲れたし喉が渇いたので、どこかに座って冷たいものを飲みたい。大通りのスーレーパゴタ通りをヤンゴン駅のほうへと真っすぐ歩いて、その高さでひときわ目立つビル、サクラタワーへと向かいました。
 to be continued
コメント (14)
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