「ニュールンベルグ裁判」
1946年のドイツ。アメリカ人判事ヘイウッドが裁判長として臨むことになったナチス戦犯裁判では、ユダヤ人迫害に加担した高名な法律家ヤニングスら被告人をめぐって、戦勝国側の検事ローソンとドイツ人弁護士ロルフが激しく争うが…
ナチスを描いた映画は数え切れないほどありますが、この作品は内容といい演技といい、傑出した名作と言えるのではないでしょうか。3時間近い長さなのですが、集中力がない私でも最後まで全くダレることなく、一気に観ることができました。裁判の展開と人間模様、そして演技にグイグイ引きこまれ、こみあげる怒りと悲しみに動揺、翻弄されっぱなしでした。あらためてナチスの残虐さ、非道さに心打ちのめされました。こんなことが本当に起きたのか…信じられない、信じたくない…法廷で明かされる悪夢は、まさに人類最大最悪の恥ずべき汚点、暗黒歴史です。
ナチスといえば、アウシュヴィッツなどでの強制収容所でのユダヤ人虐殺が有名ですが、この映画では精神や知的に障害があった人たちから生殖能力を奪う手術を強制できる断種法とか、ユダヤ人との結婚や性的関係を禁じたニュルンベルグ法とか、ナチス時代に施行された悪魔の法律がクローズアップされてます。こんなの人間のすることじゃない!人間にすることじゃない!まさに狂ってるとしか思えない。でも、ナチスのエリートたちは、狂ってなんかいなかったんですよね。彼らのほとんどが異常者なんかではなく、冷静で文化的で知的な人々だった。その怖さと悲劇を、この映画は観る者に思い知らせてくれます。
裁く側の苦悩と葛藤も痛ましかったけど、ヒトラーの台頭やユダヤ人虐殺に賛同したり、見て見ぬふりをしてナチス時代を生きたドイツ人の、不幸な罪深さに暗澹とさせられます。許せん!と断罪するのは簡単ですが、もし我々が当時のドイツ人ったら、果たしてナチスに反対したり反抗したりできたでしょうか。長いものに巻かれず生きられる!と、自信をもって私は言えません。愛する母国のために正しいと信じてやった、というヤニングの告白には、先日死刑執行となったオウム信者の後悔や懺悔の言葉とカブりました。そして、堂々と人種差別をしている某大国の大統領とも…彼こそ、今この映画を観るべき人です。ナチスやドイツ人を断罪するだけでなく、ナチスの台頭を許し利用もしたアメリカやイギリスも、決して正義ではないという痛烈なメッセージも、今を生きる私たちにの胸を衝きます。
この映画、とにかく超一流の豪華な俳優陣のアンサンブル演技が秀逸!彼らの火花散る演技合戦に圧倒されます。ヘイウッド判事役は、ハリウッド史上最高の名優と讃えられたスペンサー・トレイシー。貫禄と威厳はあるけど、決して威張りくさったエラソーな爺いではなく、温かさと優しさにあふれていて、素朴だけど人間的に懐が深く大きい人物といった、ある意味アベンジャーズとかアメコミヒーロー以上に今はもう現実的じゃない理想の男性。演技も全然オーバーではないけど、静かに力強く悲哀があって、奇をてらった演技や役をすれば演技派、と勘違いしてる自称名優とはまさに質が、格が違います。被告人ヤニング役のバート・ランカスターは、終盤までほとんど台詞がないのですが、映ってるだけでスゴい存在感。ドイツ人軍人の未亡人役を、レジェンドな大女優マレーネ・ディートリッヒが好演。60過ぎてるけど、ミステリアスでクールな魅力は褪せてません。
この映画で最も燦然としてたのは、ロルフ弁護士役のマクシミリアン・シェルです。当時30歳、オーストリア出身の気鋭の若手だった彼は、名だたるハリウッドスターたちを圧倒する大熱演を披露し、アカデミー主演男優賞を受賞する快挙を遂げたのでした。
まさに圧巻の演技!激烈で鋭い怒涛の舌鋒!生半可なアメリカ人俳優やイギリス人俳優にはこなせないような、膨大で難しい政治用語、法廷用語にあふれた英語の台詞を、ドイツ語が母国語であるオーストリア人俳優が、よどみなく感情豊かに操ってるのが驚異的。オスカー受賞も納得の名演です。演技だけでなく、理知的で端正な、それでいてドイツ男らしい骨太で精悍なイケメンぶりにも感嘆。とにかく彼、ほんと聡明で怜悧そう!数年後の出演作「トプカピ」の彼も、クールでスマートでカッコよかったわ~。晩年の彼もシブくて素敵でした。ファンレターの返事もくれた優しい彼の訃報は、本当に悲しかったです。
ローソン検事役は、悪役スターとして人気だったリチャード・ウィードマーク。冷徹に正義をまっとうしようとする、いぶし銀の演技に痺れた!彼とマクシミリアン・シェルとの白熱した法廷バトルは、異様な緊迫感と迫力で圧倒されます。この映画を観た後に、某事務所の人気タレントが共演した裁判もの映画は観ないほうがいいかも。最高級ワインとカルピスぐらいの違いがあるでしょうから。裁判の証人役で、モンゴメリー・クリフトとジュディ・ガーランドが登場。生き延びたけど、人間としての尊厳を奪われ、身も心もズタズタにされ、法廷でさらなる屈辱にまみれる彼らの、虚ろで悲痛な表情や言動も観る人の胸をえぐります。
この映画をリメイクするとしたら、my理想妄想キャストはこうだ!
ヘイウッド判事 … トム・ハンクス
ローソン検事 … トム・ハーディ
ヤニング被告 … コリン・ファース
ロルフ弁護士 … ピエール・ニネ
公爵夫人 … イザベル・ユペール
断種法の証人 … ベン・ウィショー
ニュルンベルグ法の証人 … アリシア・ヴィキャンデル
こんなん出ましたけどぉ~?
トム・ハンクスは、明らかに第二のスペンサー・トレイシーになろうとしてるので、ヘイウッド判事役をやらせてあげたら欣喜雀躍するでしょう。ロルフ弁護士役は、英語が完璧なドイツ人俳優であるダニエル・ブリュールあたりが妥当なんだけど、あえてフランス人のニネっちを。ニネっちも英語が得意そうだし、コメディフランセーズ仕込みの熱演が見たい!彼とトムハの激突なんて、想像しただけでジュンとくるわ~(^^♪
1946年のドイツ。アメリカ人判事ヘイウッドが裁判長として臨むことになったナチス戦犯裁判では、ユダヤ人迫害に加担した高名な法律家ヤニングスら被告人をめぐって、戦勝国側の検事ローソンとドイツ人弁護士ロルフが激しく争うが…
ナチスを描いた映画は数え切れないほどありますが、この作品は内容といい演技といい、傑出した名作と言えるのではないでしょうか。3時間近い長さなのですが、集中力がない私でも最後まで全くダレることなく、一気に観ることができました。裁判の展開と人間模様、そして演技にグイグイ引きこまれ、こみあげる怒りと悲しみに動揺、翻弄されっぱなしでした。あらためてナチスの残虐さ、非道さに心打ちのめされました。こんなことが本当に起きたのか…信じられない、信じたくない…法廷で明かされる悪夢は、まさに人類最大最悪の恥ずべき汚点、暗黒歴史です。
ナチスといえば、アウシュヴィッツなどでの強制収容所でのユダヤ人虐殺が有名ですが、この映画では精神や知的に障害があった人たちから生殖能力を奪う手術を強制できる断種法とか、ユダヤ人との結婚や性的関係を禁じたニュルンベルグ法とか、ナチス時代に施行された悪魔の法律がクローズアップされてます。こんなの人間のすることじゃない!人間にすることじゃない!まさに狂ってるとしか思えない。でも、ナチスのエリートたちは、狂ってなんかいなかったんですよね。彼らのほとんどが異常者なんかではなく、冷静で文化的で知的な人々だった。その怖さと悲劇を、この映画は観る者に思い知らせてくれます。
裁く側の苦悩と葛藤も痛ましかったけど、ヒトラーの台頭やユダヤ人虐殺に賛同したり、見て見ぬふりをしてナチス時代を生きたドイツ人の、不幸な罪深さに暗澹とさせられます。許せん!と断罪するのは簡単ですが、もし我々が当時のドイツ人ったら、果たしてナチスに反対したり反抗したりできたでしょうか。長いものに巻かれず生きられる!と、自信をもって私は言えません。愛する母国のために正しいと信じてやった、というヤニングの告白には、先日死刑執行となったオウム信者の後悔や懺悔の言葉とカブりました。そして、堂々と人種差別をしている某大国の大統領とも…彼こそ、今この映画を観るべき人です。ナチスやドイツ人を断罪するだけでなく、ナチスの台頭を許し利用もしたアメリカやイギリスも、決して正義ではないという痛烈なメッセージも、今を生きる私たちにの胸を衝きます。
この映画、とにかく超一流の豪華な俳優陣のアンサンブル演技が秀逸!彼らの火花散る演技合戦に圧倒されます。ヘイウッド判事役は、ハリウッド史上最高の名優と讃えられたスペンサー・トレイシー。貫禄と威厳はあるけど、決して威張りくさったエラソーな爺いではなく、温かさと優しさにあふれていて、素朴だけど人間的に懐が深く大きい人物といった、ある意味アベンジャーズとかアメコミヒーロー以上に今はもう現実的じゃない理想の男性。演技も全然オーバーではないけど、静かに力強く悲哀があって、奇をてらった演技や役をすれば演技派、と勘違いしてる自称名優とはまさに質が、格が違います。被告人ヤニング役のバート・ランカスターは、終盤までほとんど台詞がないのですが、映ってるだけでスゴい存在感。ドイツ人軍人の未亡人役を、レジェンドな大女優マレーネ・ディートリッヒが好演。60過ぎてるけど、ミステリアスでクールな魅力は褪せてません。
この映画で最も燦然としてたのは、ロルフ弁護士役のマクシミリアン・シェルです。当時30歳、オーストリア出身の気鋭の若手だった彼は、名だたるハリウッドスターたちを圧倒する大熱演を披露し、アカデミー主演男優賞を受賞する快挙を遂げたのでした。
まさに圧巻の演技!激烈で鋭い怒涛の舌鋒!生半可なアメリカ人俳優やイギリス人俳優にはこなせないような、膨大で難しい政治用語、法廷用語にあふれた英語の台詞を、ドイツ語が母国語であるオーストリア人俳優が、よどみなく感情豊かに操ってるのが驚異的。オスカー受賞も納得の名演です。演技だけでなく、理知的で端正な、それでいてドイツ男らしい骨太で精悍なイケメンぶりにも感嘆。とにかく彼、ほんと聡明で怜悧そう!数年後の出演作「トプカピ」の彼も、クールでスマートでカッコよかったわ~。晩年の彼もシブくて素敵でした。ファンレターの返事もくれた優しい彼の訃報は、本当に悲しかったです。
ローソン検事役は、悪役スターとして人気だったリチャード・ウィードマーク。冷徹に正義をまっとうしようとする、いぶし銀の演技に痺れた!彼とマクシミリアン・シェルとの白熱した法廷バトルは、異様な緊迫感と迫力で圧倒されます。この映画を観た後に、某事務所の人気タレントが共演した裁判もの映画は観ないほうがいいかも。最高級ワインとカルピスぐらいの違いがあるでしょうから。裁判の証人役で、モンゴメリー・クリフトとジュディ・ガーランドが登場。生き延びたけど、人間としての尊厳を奪われ、身も心もズタズタにされ、法廷でさらなる屈辱にまみれる彼らの、虚ろで悲痛な表情や言動も観る人の胸をえぐります。
この映画をリメイクするとしたら、my理想妄想キャストはこうだ!
ヘイウッド判事 … トム・ハンクス
ローソン検事 … トム・ハーディ
ヤニング被告 … コリン・ファース
ロルフ弁護士 … ピエール・ニネ
公爵夫人 … イザベル・ユペール
断種法の証人 … ベン・ウィショー
ニュルンベルグ法の証人 … アリシア・ヴィキャンデル
こんなん出ましたけどぉ~?
トム・ハンクスは、明らかに第二のスペンサー・トレイシーになろうとしてるので、ヘイウッド判事役をやらせてあげたら欣喜雀躍するでしょう。ロルフ弁護士役は、英語が完璧なドイツ人俳優であるダニエル・ブリュールあたりが妥当なんだけど、あえてフランス人のニネっちを。ニネっちも英語が得意そうだし、コメディフランセーズ仕込みの熱演が見たい!彼とトムハの激突なんて、想像しただけでジュンとくるわ~(^^♪