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みなもと太郎『漫画の名セリフ お楽しみはこれもなのじゃ』

2007-07-07 15:14:45 | ノンジャンル
 吾妻ひでお氏が「資料として置いときたい」と評したみなもと太郎氏の「漫画の名セリフ お楽しみはこれもなのじゃ」を読みました。みなもと太郎氏自身有名な漫画家で、「ホモホモセブン」はNHK・BS2の「マンガ夜話」でも取り上げられました。この本は、和田誠氏が映画の名セリフとその解説を右ページに、その映画のイラストを左ページに、というい構成で書かれた「お楽しみはこれからだ」のマネ本です。
 ただ、この本は漫画の名セリフ集というよりも、漫画史を述べ、今となっては忘れられてしまった有能なマンガ家を発掘している貴重な本でもあって、貸し本屋時代にマンガを読みあさっていた人は、とても楽しめる本になっています。これについては、解説の米沢嘉博氏がこのように書いています。「(貸本屋で圧倒的人気作家だったさいとう・たかを、女の子たちの支持を集めていた小島剛夕、カッコ良さの極致だったありかわ栄一については誰も語らない。そんなことをきちんと書いてくれたのは、みなもとさんだけだったといってもよい。(中略)貸本だけではない。そこでは、誰もが語ったことのない若月てつや、藤木輝美、夢野凡天、下山長平などの作家が取り上げられ、水野英子はもとより、矢代まさこや西谷祥子などのブームいぜんの少女マンガについてまで言及されている。(中略)忘れられていた作家、作品、誰も覚えていないのだけれどもずっと気にかかっていた作家‥‥そんなものが、鋭いコメントとツボを押さえた引用、そして愛情あふれる想いを込めて、次々とお皿の上に並べられていく。」
 ということで、初めて見るマンガがたくさん出て来るのですが、私が中でも面白いと思ったのは、戦後すぐの作家南部正太郎氏で、「オチの四コマ目になると常に誰かしらが目をむき、身体は波打ち、青ざめて歯を喰いしばり、あらぬ姿でみもだえ、明らかに精神が破滅の極限まで追いやられてしまう」というシュールなマンガで、著者はムンクやルソーの絵に共通するものをそこに見るのです。そして著者が絶対にこの作家について語りたいと思っていたという楠勝平氏。死の影が全編に色濃く出ているのですが、人間に対する深い洞察がなされていて、漫画史を語る上で忘れてはならない人のようでした。また戦前の少女マンガというのもインパクトがあって、藤木輝美「おおきなアカちゃん」の中のセリフ「みどりの小山に赤いやね お城のようなご門まで のぼるカイダン百七ツ アレーおったまげた」というなんとも素朴なセリフに時代を感じました。
 もちろんこの本の題名が「漫画の名セリフ」なので、笑える名セリフも数々ありましたが、これを全部あげると、とんでもない長文になるので、代表して赤塚不二夫「天才バカボンのおやじ」から一つ。「こいつは今年から英語しか使わないと誓いをたてたんです」「イエーッシ イエーッシ イエーッシ」「英語はうまいのか?」「それが ぜんぜんできないんでーす」「できないのに しゃべるとは エライなあ」
 ということで、マンガ好きな方、必携です。