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ジャレド・ダイアモンド『文明崩壊(上)』その3

2011-07-07 00:26:00 | ノンジャンル
 またまた昨日の続きです。
 第4章では、北アメリカ南西部の先住民アナサジ族についての検証がなされます。森林の再生率が非常に低い条件のもと、複雑な農業社会を発達させ、石造りの見事な建築物を残すほど文明を発展させたアナサジ族でしたが、水の管理方法を間違えて土壌浸食を起こしてしまい、薪や建築用材のために森林破壊を生じさせ、その後も遠距離からの木材輸送を続けてしまった結果、人口が増え続け、やがて小型の帝国へと分裂し、帝国間の戦闘、人肉食を経て滅亡に至ったことが語られます。
 第5章では、最も進歩的で創造性豊かだったにもかかわらず自壊したマヤ文明について語られます。ここでは農業生産率が低く、使える家畜がなかった上に、はやり季節熱帯林の破壊と土壌浸食、気候変動(旱魃)、マヤ内部で絶えず起こっていた部族間の敵対関係が崩壊への先鞭をつけ、最後は、王同士、貴族同士の競争が、社会に内在する問題の解決よりも、戦争と石碑の建造を重視するという風潮につながり、周期的な旱魃とともに滅亡していったことが語られます。
 第6章では、ヴァイキングによる植民の成功例としてオークニー諸島、シェトランド諸島、フェロー諸島、失敗例としてアイスランド、ヴィンランドの例が語られます。ノルウェー及びイギリスからの海上距離と航海時間、(事例によっては)非ヴァイキングの住民による妨害、そしてとりわけ緯度と気候によって決まる農業の適否、浸食と森林破壊の起こりやすさに代表される環境の脆弱性という4つの変数を使って、それぞれの例について文明が維持された原因、文明が崩壊してしまった原因が説明されていきます。
 第7章では、ノルウェー領グリーンランドがある程度の成功を収めるまでの経過、第8章では、その後の経過、すなわち自然植生の破壊が土壌浸食をもたらし、一方で起こった森林破壊も木材と薪の欠乏を招き、それが鉄の生産の減少をも呼び、鉄の欠乏がはたまた鉄の道具の欠乏を呼んで様々な生産効率の低下を招き、イヌイットに対する軍事上の利点も損ない、それに加えて気候変動、ノルウェー本国との友好的な接触の減少、イヌイットとの敵対的な接触の増大、ノルウェー人自身の保守的な世界観などなどが相まって、住民が滅亡するまでの過程が語られます。

 下巻ではこれまでの論旨をふまえて、文明が存続するための二つの道筋が示され、現在の世界が抱えている問題の記述、そして未来へ向けての展望が語られるようです。どのような結論が待っているのか、読むのが楽しみです。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/