鈴木則文監督の'68年作品『忍びの卍』をスカパーの東映チャンネルで見ました。家光の時代、家光に世継ぎを産ませまいとする根来衆の忍者ら(何とリーダーは桜町弘子!)と、それと対立する甲賀忍者(リーダーは白塗りの潮健児!)の戦い、それに大奥を仕切る春日局、大老に雇われた柳生一族の浪人(夏八木勲)と桜町弘子との恋を描いた作品で、次々と繰り出される摩訶不思議な忍法や迫力ある殺陣、そして見事な画面の連鎖で魅せる傑作忍者映画でした。隠された名作だと思います。
さて、宮田珠己さんの'11年作品『だいたい四国八十八ケ所』を読みました。
「何のために、なんて考えていると、旅はいつまでたっても始まらない。意味を考える前に計画を立て、結論が出る前に出発してしまう。これが大切である。」と語る著者は、「一周してみたい(四国)・全部回ってみたい(八十八ケ所)・いっぱい歩きたい」という三つの理由だけから、四国のお遍路を思い立ち、すぐに実行に移します。第一番の札所・徳島の霊山寺を訪れた著者は、そこの何もなさに拍子抜けしますが、弘法大師の化身として「同行」させなければいけない杖は持たず、しかし、「へんろみち保存協力会」が出している地図は手に入れ、道中で親切にしてくれた人に渡す「納め札」も購入して出発します。各札所の本堂と大師堂で納経するという作法は守って進みますが、三つ目の札所でさっそく朱印をもらうのを忘れて、来た道を戻るはめに‥‥。お遍路さんの行動パターンに見事に対応している宿のシステムに感心し、中高年のお遍路さんが多いことから、四国遍路は適度に誰かと打ちとけたい中高年に最適の旅のルートではないかと考え、やがて素朴な地元の自然信仰の上に弘法大師信仰が塗り重ねられたのがお遍路ではと気付き、5日目にはネパール山間部の景色を彷佛とさせる峠に至ります。そして高知の海では、今見ている風景が、弘法大師の頃と変わっていないということがうまく実感できなかったり、付かず離れずの快適な距離感での他のお遍路さんとの交流を楽しんだり、瀬戸内海の大島での潮流体験船に大興奮したり、宿坊の朝の勤行にうっとりしたりしながら、数々の困難を経て、また数々の「いい道」を歩み、数々の絶景に魅せられて、無事に3年にわたった「区切り打ち」のご遍路を終えます。その結果は「あー面白かった」であり、具体的な情報としては、お遍路は、夏は大平洋、冬は瀬戸内を歩くのが正解かもと教えてくれ、印象深かった札所については304~5ページで、歩いて楽しかった道、楽しくなかった道については254~7ページで紹介してくれています。
もちろん以上の内容以外にも、道中の様子が克明に書かれていて、先の長い道のりで、手許に残された二つのパンをどのように食べるかを考える77~8ページの部分など、ささいなことの描写で笑わせてくれる宮田さんの筆力はここでも健在でした。「旅の醍醐味の最たるものは、今自分がその場所にいるという実感ではないだろうか」など、ためになる「哲学的言説」も多く含まれ、300ページを超える分量ながら、1日で読んでしまえる、「あー面白かった」と言うしかない本でした。常に身近に置いておきたい本の一つです。なお、もっと詳しい内容に関しては、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Books」の「宮田珠己『東南アジア四次元日記』」の場所にアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
さて、宮田珠己さんの'11年作品『だいたい四国八十八ケ所』を読みました。
「何のために、なんて考えていると、旅はいつまでたっても始まらない。意味を考える前に計画を立て、結論が出る前に出発してしまう。これが大切である。」と語る著者は、「一周してみたい(四国)・全部回ってみたい(八十八ケ所)・いっぱい歩きたい」という三つの理由だけから、四国のお遍路を思い立ち、すぐに実行に移します。第一番の札所・徳島の霊山寺を訪れた著者は、そこの何もなさに拍子抜けしますが、弘法大師の化身として「同行」させなければいけない杖は持たず、しかし、「へんろみち保存協力会」が出している地図は手に入れ、道中で親切にしてくれた人に渡す「納め札」も購入して出発します。各札所の本堂と大師堂で納経するという作法は守って進みますが、三つ目の札所でさっそく朱印をもらうのを忘れて、来た道を戻るはめに‥‥。お遍路さんの行動パターンに見事に対応している宿のシステムに感心し、中高年のお遍路さんが多いことから、四国遍路は適度に誰かと打ちとけたい中高年に最適の旅のルートではないかと考え、やがて素朴な地元の自然信仰の上に弘法大師信仰が塗り重ねられたのがお遍路ではと気付き、5日目にはネパール山間部の景色を彷佛とさせる峠に至ります。そして高知の海では、今見ている風景が、弘法大師の頃と変わっていないということがうまく実感できなかったり、付かず離れずの快適な距離感での他のお遍路さんとの交流を楽しんだり、瀬戸内海の大島での潮流体験船に大興奮したり、宿坊の朝の勤行にうっとりしたりしながら、数々の困難を経て、また数々の「いい道」を歩み、数々の絶景に魅せられて、無事に3年にわたった「区切り打ち」のご遍路を終えます。その結果は「あー面白かった」であり、具体的な情報としては、お遍路は、夏は大平洋、冬は瀬戸内を歩くのが正解かもと教えてくれ、印象深かった札所については304~5ページで、歩いて楽しかった道、楽しくなかった道については254~7ページで紹介してくれています。
もちろん以上の内容以外にも、道中の様子が克明に書かれていて、先の長い道のりで、手許に残された二つのパンをどのように食べるかを考える77~8ページの部分など、ささいなことの描写で笑わせてくれる宮田さんの筆力はここでも健在でした。「旅の醍醐味の最たるものは、今自分がその場所にいるという実感ではないだろうか」など、ためになる「哲学的言説」も多く含まれ、300ページを超える分量ながら、1日で読んでしまえる、「あー面白かった」と言うしかない本でした。常に身近に置いておきたい本の一つです。なお、もっと詳しい内容に関しては、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Books」の「宮田珠己『東南アジア四次元日記』」の場所にアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)