昨日、エンタの情報誌『ぴあ』の廃刊が報道されていましたが、その最終号の中でみうらじゅんさんらが言っていたように、'80年代から'90年代にかけての映画好きな人間は『ぴあ』派と『シティロード』派に分かれていたように思います。どちらの情報誌にも東京近郊の映画館の一ヶ月分の上映スケジュールが掲載されていた上、名画座などでその情報誌を提示すれば数百円の割り引きが受けられました。当時('70年代後半から'80年代前半にかけて)、大学の授業をさぼり、毎日のように名画座に通い出していた私は、それらの雑誌の存在を知って狂喜し、それ以降発売日には必ずゲットし、1ヶ月分の映画見物スケジュールを組んで、手帳に書き込んでいたことを、今でも鮮明に記憶しています。巻末の読者プレゼントでは、映画館の無料招待券もあり、ロードショー館はさすがになかなか当たりませんでしたが、池袋文芸坐などは結構よく当たり、毎月のように数枚の無料招待券をもらっていたりもしました。
どちらも最初は月刊誌で、その段階では私は『ぴあ』を買ったり、『シティロード』を買ったりしていたようにも思うのですが、ページのレイアウトは『ぴあ』がごちゃごちゃした感じなのに対して、『シティロード』の方がすっきりしており、そういった点でも私はかなり『シティロード』派だったように思います。また、『ぴあ』は及川正道さんの表紙からも分かるように「ポップ」志向で、映画紹介なども軽薄短小を地で行っていたような感じだったのに対して、『シティロード』は読者がその映画を見たいか見たくないか判断するのに参考となるような的確な情報を、きちんと分かりやすく発信していた記憶が朧げながらあります。
やがて『ぴあ』は隔週刊となり、そこまでこまごまとした情報を得る必要はないと思っていた私は、完全に『シティロード』派となり、『ぴあ』はまったく買わなくなりました。その後も『ぴあ』は拡大路線をひた走り、『チケットぴあ』なる商売も始め、『シティロード』は完全に『ぴあ』の勢いに押される格好となり、'93年ついに廃刊に追い込まれてしまいます。それを知った時の絶望感、敗北感!「悪貨が良貨を駆逐する」という新しい格言が誕生したかのような、そんな思いでした。
昨晩の報道ステーションでキャスターの古館さんは「また一つの時代が終わった」というようなことをおっしゃっていましたが、私にとっては'93年に既に「一つの時代は終わっていた」訳です。『シティロード』が『ぴあ』の軍門に下りつつある時期、フィルムセンターは焼け、池袋の文芸坐は閉館となり、他にも大井町の名画座も消えてゆくなど、映画にとっては冬の時代でもありました。しかし現在、焼けたフィルムセンターも再生し、池袋の文芸座も復活し、いろんな特色ある小さな映画館も増えてきていて、東京における映画環境は明らかにいい方向へと進んでいるように感じます。そんな中での『ぴあ』の廃刊。私は喜ばしいことなんじゃないかななどと、勝手に思ったりもしています。
ジル・ドゥルーズは「リゾーム」というネットワーク社会を予言していましたが、今まさに社会はその方向に進んでいこうとしています。『ぴあ』のようなメジャーな情報誌が一括的に、しかも上位下達的に情報を与え、情報料として利益を収奪するというシステム自体が、既に時代後れになりつつあるとも言えるのではないでしょうか? 映画に関する情報発信はインターネットでのメールサービスや、新聞などの各種印刷媒体で、以前よりも活発に行われるようになっており、今回の『ぴあ』の廃刊で一部の人が危惧しているように、「人は自分の好きな分野の情報しか得ようとしなくなり、どんどん蛸壺的にマニアックになっていってしまう」という現象など、私は起こらないと楽観的に考えています。改めて言いますが『ぴあ』の廃刊、喜んでいいんじゃないでしょうか?
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
どちらも最初は月刊誌で、その段階では私は『ぴあ』を買ったり、『シティロード』を買ったりしていたようにも思うのですが、ページのレイアウトは『ぴあ』がごちゃごちゃした感じなのに対して、『シティロード』の方がすっきりしており、そういった点でも私はかなり『シティロード』派だったように思います。また、『ぴあ』は及川正道さんの表紙からも分かるように「ポップ」志向で、映画紹介なども軽薄短小を地で行っていたような感じだったのに対して、『シティロード』は読者がその映画を見たいか見たくないか判断するのに参考となるような的確な情報を、きちんと分かりやすく発信していた記憶が朧げながらあります。
やがて『ぴあ』は隔週刊となり、そこまでこまごまとした情報を得る必要はないと思っていた私は、完全に『シティロード』派となり、『ぴあ』はまったく買わなくなりました。その後も『ぴあ』は拡大路線をひた走り、『チケットぴあ』なる商売も始め、『シティロード』は完全に『ぴあ』の勢いに押される格好となり、'93年ついに廃刊に追い込まれてしまいます。それを知った時の絶望感、敗北感!「悪貨が良貨を駆逐する」という新しい格言が誕生したかのような、そんな思いでした。
昨晩の報道ステーションでキャスターの古館さんは「また一つの時代が終わった」というようなことをおっしゃっていましたが、私にとっては'93年に既に「一つの時代は終わっていた」訳です。『シティロード』が『ぴあ』の軍門に下りつつある時期、フィルムセンターは焼け、池袋の文芸坐は閉館となり、他にも大井町の名画座も消えてゆくなど、映画にとっては冬の時代でもありました。しかし現在、焼けたフィルムセンターも再生し、池袋の文芸座も復活し、いろんな特色ある小さな映画館も増えてきていて、東京における映画環境は明らかにいい方向へと進んでいるように感じます。そんな中での『ぴあ』の廃刊。私は喜ばしいことなんじゃないかななどと、勝手に思ったりもしています。
ジル・ドゥルーズは「リゾーム」というネットワーク社会を予言していましたが、今まさに社会はその方向に進んでいこうとしています。『ぴあ』のようなメジャーな情報誌が一括的に、しかも上位下達的に情報を与え、情報料として利益を収奪するというシステム自体が、既に時代後れになりつつあるとも言えるのではないでしょうか? 映画に関する情報発信はインターネットでのメールサービスや、新聞などの各種印刷媒体で、以前よりも活発に行われるようになっており、今回の『ぴあ』の廃刊で一部の人が危惧しているように、「人は自分の好きな分野の情報しか得ようとしなくなり、どんどん蛸壺的にマニアックになっていってしまう」という現象など、私は起こらないと楽観的に考えています。改めて言いますが『ぴあ』の廃刊、喜んでいいんじゃないでしょうか?
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)