ロバート・B・ウエイド監督・脚本・製作・共同編集の'11年作品『映画と恋とウディ・アレン』をWOWOWシネマで見ました。ウディ・アレン本人はもちろん、マーティン・スコセッシ、マリエル・ヘミングウェイ、ダイアン・キートン、ショーン・ペン、ナオミ・ワッツらにインタビューしたドキュメンタリーでした。
さて、河野多惠子さんと山田詠美さんの対談本『文学問答』の中で、河野さんが素晴らしいと言っている、菊池寛の'20~21年作品『真珠夫人』を読みました。
信一郎は湯河原で静養している新妻に会うために、国府津の駅で降りると、熱海に向かう乗客と相乗りで湯河原まで自動車で行かないか、と男に誘われる。請われるままに信一郎が車に乗ると、相客は品のいい学生だった。信一郎はやがて学生が青木という、自分の後輩に当たる者だと知り、親しくなるが、車は途中で事故を起こし、学生は開いた扉と岩壁の間に体を挟み、死んでしまう。青木は死ぬ直前、腕時計を返してほしい、ノートを捨ててほしい、と言い、瑠璃子という名を叫んだ。信一郎は死んだ青木の手から腕時計を外すと、それはプラチナ製で、宝石が散りばめられているものだった。
信一郎は腕時計を返す相手を瑠璃子が知っていると思い、青木の葬式に出向く。葬式には政財界から錚々たる面子が顔を揃えていた。読経が始まり一堂が静まった後、イタリア製の車が乗り入れ、そこから気高く若い女性が、悪びれた様子もなく降り立ち、最前列に席を取った。式が終わると、その女性は4人の大学生に囲まれ、やがて車上の人となり立ち去った。信一郎は大学生たちの後を追った。やがて大学生は三々五々と別れていき、最後に残った1人に信一郎が声をかけると、大学生はさっきの女性は有名な荘田夫人で、貴族院の老政治家である唐沢男爵の娘、名は瑠璃子だと教えてくれた。そして、瑠璃子夫人は夫の勝平氏を失ってから、多くの男性と交際をしていて、そのうちの1人が青木だったこと、庄田家は今では瑠璃子と勝平の娘である19歳の美奈子だけだということも教えれくれた。信一郎は瑠璃子の邸宅の場所を教えてもらい、突然そこを訪ね、青木の件でお会いしたいと言うと、瑠璃子は会ってくれる。夫人は口でこそ青年の死を悼んでいるものの、その華やかな様子や表情のどこにも、それらしい陰さえ見えなかった。青年の遺言のことを伝えると、瑠璃子は腕時計は私から持ち主に返しておきましょうと言って、信一郎から腕時計を預かる。そして訪ねてきてくれた御礼として、夫人の属する団体が主催する慈善音楽会の入場券とプログラムをくれた。瑠璃子の邸宅を辞した信一郎は、青木が腕時計を突っ返してくれと言っていたことを思い出し、瑠璃子が体よく時計を取り返したのではないかとの疑いを持つ。そしてノートのことを思い出し、それを読んでみると、そこには、愛の印としてくれた時計と寸分同じ物を、やはり夫人と付き合いのある村上海軍大尉が身につけているのを知り、純真な男性の感情を弄ぶことが、どんなに危険であるのか、夫人に知らせてやるために、自分の血で彼女の偽りの贈り物を、真赤に染めるのだ、と書いてあった。夫人とは瑠璃子のことを指しているのだろうか?
荘田勝平は一代で財産を築き、世の中は全て金次第だと考えていた。今日も大金をはたいて、政財界の大物を集め、園遊会を開いていた。すると、成金の悪口を言う学生と、それを聞く美しい令嬢の声が聞こえてきた。2人は恋人同士らしい。彼らの話に憤激した勝平は、怒りを抑えて、彼らに声をかけたが、学生は狼狽する様子も見せず、持論を展開した。勝平は反論し、やがて金の力がどんなに恐ろしいかが判る時が来ると睨むと、令嬢の顔は憎悪に燃えるのだった。2人が去ると、勝平は復讐を誓った。学生の父は杉野子爵、令嬢の父は貴族院の老議員である唐沢男爵だったが、どちらも貧乏華族だった。やがて勝平の心に、ある悪魔的な考えが思い浮かぶ。
瑠璃子の兄は画家志望だったが、父は男の一生の仕事として認めようとせず、やがて兄は家を出てしまう。瑠璃子は双方の考えが理解できるだけに、2人の争いに苦しんだ。そこへ瑠璃子の恋人の父、杉野子爵がやって来て、瑠璃子の父と会ったが、やがて憤激した父によって子爵は追い返された。瑠璃子が尋ねると、子爵は瑠璃子の縁談を持ってきたのだと言う。呆然とする瑠璃子。(明日へ続きます‥‥)
→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
さて、河野多惠子さんと山田詠美さんの対談本『文学問答』の中で、河野さんが素晴らしいと言っている、菊池寛の'20~21年作品『真珠夫人』を読みました。
信一郎は湯河原で静養している新妻に会うために、国府津の駅で降りると、熱海に向かう乗客と相乗りで湯河原まで自動車で行かないか、と男に誘われる。請われるままに信一郎が車に乗ると、相客は品のいい学生だった。信一郎はやがて学生が青木という、自分の後輩に当たる者だと知り、親しくなるが、車は途中で事故を起こし、学生は開いた扉と岩壁の間に体を挟み、死んでしまう。青木は死ぬ直前、腕時計を返してほしい、ノートを捨ててほしい、と言い、瑠璃子という名を叫んだ。信一郎は死んだ青木の手から腕時計を外すと、それはプラチナ製で、宝石が散りばめられているものだった。
信一郎は腕時計を返す相手を瑠璃子が知っていると思い、青木の葬式に出向く。葬式には政財界から錚々たる面子が顔を揃えていた。読経が始まり一堂が静まった後、イタリア製の車が乗り入れ、そこから気高く若い女性が、悪びれた様子もなく降り立ち、最前列に席を取った。式が終わると、その女性は4人の大学生に囲まれ、やがて車上の人となり立ち去った。信一郎は大学生たちの後を追った。やがて大学生は三々五々と別れていき、最後に残った1人に信一郎が声をかけると、大学生はさっきの女性は有名な荘田夫人で、貴族院の老政治家である唐沢男爵の娘、名は瑠璃子だと教えてくれた。そして、瑠璃子夫人は夫の勝平氏を失ってから、多くの男性と交際をしていて、そのうちの1人が青木だったこと、庄田家は今では瑠璃子と勝平の娘である19歳の美奈子だけだということも教えれくれた。信一郎は瑠璃子の邸宅の場所を教えてもらい、突然そこを訪ね、青木の件でお会いしたいと言うと、瑠璃子は会ってくれる。夫人は口でこそ青年の死を悼んでいるものの、その華やかな様子や表情のどこにも、それらしい陰さえ見えなかった。青年の遺言のことを伝えると、瑠璃子は腕時計は私から持ち主に返しておきましょうと言って、信一郎から腕時計を預かる。そして訪ねてきてくれた御礼として、夫人の属する団体が主催する慈善音楽会の入場券とプログラムをくれた。瑠璃子の邸宅を辞した信一郎は、青木が腕時計を突っ返してくれと言っていたことを思い出し、瑠璃子が体よく時計を取り返したのではないかとの疑いを持つ。そしてノートのことを思い出し、それを読んでみると、そこには、愛の印としてくれた時計と寸分同じ物を、やはり夫人と付き合いのある村上海軍大尉が身につけているのを知り、純真な男性の感情を弄ぶことが、どんなに危険であるのか、夫人に知らせてやるために、自分の血で彼女の偽りの贈り物を、真赤に染めるのだ、と書いてあった。夫人とは瑠璃子のことを指しているのだろうか?
荘田勝平は一代で財産を築き、世の中は全て金次第だと考えていた。今日も大金をはたいて、政財界の大物を集め、園遊会を開いていた。すると、成金の悪口を言う学生と、それを聞く美しい令嬢の声が聞こえてきた。2人は恋人同士らしい。彼らの話に憤激した勝平は、怒りを抑えて、彼らに声をかけたが、学生は狼狽する様子も見せず、持論を展開した。勝平は反論し、やがて金の力がどんなに恐ろしいかが判る時が来ると睨むと、令嬢の顔は憎悪に燃えるのだった。2人が去ると、勝平は復讐を誓った。学生の父は杉野子爵、令嬢の父は貴族院の老議員である唐沢男爵だったが、どちらも貧乏華族だった。やがて勝平の心に、ある悪魔的な考えが思い浮かぶ。
瑠璃子の兄は画家志望だったが、父は男の一生の仕事として認めようとせず、やがて兄は家を出てしまう。瑠璃子は双方の考えが理解できるだけに、2人の争いに苦しんだ。そこへ瑠璃子の恋人の父、杉野子爵がやって来て、瑠璃子の父と会ったが、やがて憤激した父によって子爵は追い返された。瑠璃子が尋ねると、子爵は瑠璃子の縁談を持ってきたのだと言う。呆然とする瑠璃子。(明日へ続きます‥‥)
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