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神代辰巳監督『恋人たちは濡れた』その2

2015-09-28 05:48:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
「さよ~な~ら~♪さよな~ら~♪元気でい~て~ね~♪」という都はるみの声。公楽館の宣伝カー。「す~きな~♪」。車停まる。「ああ、しょうがないなあ。(青年が車を運転していた劇場主にフィルム缶を渡す)このまま俺が行ってやるから、お前……置いとけ」。車出る。青年「社長、乗っけてってくださいよ。……車か何かに積めるでしょう(車の後を追う)」「そんなの、乗っからねえよ」「こっちの身にもなってくださいよ。冷たい雨ん中、自転車かかえて歩けないよ~。バカ野郎。(自転車の向きを元に戻し)畜生。(自転車押す。)いい加減にしろよ。俺りゃ……野郎じゃないんだから」「いいから隠すなよ。な、困ったことがあったら、俺たちに打ち明けろよ。(男、傘差し)な、どんなことでも相談乗るからよ」「このどうしようもない田舎っぺが」「なあ、何があったんだよ。俺、力になるよ」「……、俺、そんなんじゃないって言ってんだろ? 何べん言や分かるんだよ。この、肥溜めのどん百姓!」「(青年の肩つかみ)分からんのかよう! え? 俺はお前のこと考えてやってんだぞ」「(フード脱ぎ)おい、いい加減にしろよ。おんどりゃ、しまいに血見るど。俺のそばからすぐ離れろよ。離れなきゃ、この野郎!(自転車を男に向けて転がす)」「こんなに心配してやってんのによう」。自転車倒れ、喧嘩に。青年、倒される。琵琶の音。
 雨の中、傘持ち、線路の上を自転車押してくる青年。「このざま~、涙ぐましく」と独白。
 劇場に戻ってくる青年。「まあ、どうしたって言うの? お入んなさい」。青年、自転車停めてチケット売り場に入り、レインコート脱ぐ。「どうしたのさ、どうしてそんなひどい目に会ったのよ?」。青年、ジャンパーも脱ぎ「ここに来てから、ろくな目に会わないですよ」「わあ、ひどい。誰がこんな目に。あんた、悪い人じゃないのにねえ」「ひどい町ですよ、ここは」「町のせいかどうか」。女、奥へ行く。主人、車で帰って来る。フィルム缶抱えて「おい、自転車のパンク、直しとけよ」「分かってますよ!」「フィルム、ここに置いておくから映写室へ運んどいてくれ」「はい」。主人、車に乗り、バックして出発。宣伝カーの歌。着替えをもった女、出て来る。ズームアップ。「亭主だったの?」「ええ。出て行きましたよ。すぐに」「ええ、さあ、着替えなさい。(青年、上半身裸になる。)あんた、ヤクザ?」「いや」「そんなにやられて、仕返しか何かされたんじゃないかと思ったわよ」「(ランニング着て)違いますよ」「なら、どうしてそんなひどい目に会ったのよ」「さあ、訳分かんないですよ。世の中には悪い奴が一杯いますからね」「んん、私ね、そんな口の軽い女じゃないのよ。打ち明けてくれたって大丈夫なのに。さあ、下も着替えなさい」「ここで?」「何言ってんのよ。あんた男でしょ?」「そりゃ男には違いないですがね(下半身裸に)」「(それを見て)まだ子供ね。(パンツ、後ろに渡す。)」「冗談じゃないよ!(パンツ、投げる)旦那のパンツなんか汚なくってはけないよ。」女、胸元合わせる。
 船着き場。汽笛の音。海沿いに青年と女、歩いている。「どうしてですか? どうして僕をこんな所まで連れ出すんですか? 分かんねえよ。僕をこんな所まで連れ出して。旦那が帰って来ないからですか?」「嫌なこと言うわね。そんなこと関係ないわよ。……こと言うのに」「バカな。崩れてなんかいませんよ」。女、無人の船に乗り込み、青年ついていく。
「あんまりいい旦那じゃないですね」「やなの。そう思われるのが一番嫌なの。ねえ、あたし、あなたに嫌われてる? 嫌ってる?」「いや、でも俺、お宅辞めようと思ってるんです」「辞めてって、どこかへ行くってことなの?」「ええ、町が性に合わないんですよ」「それだけで……の?」「いや、違いますよ」「じゃ、……、よそ行けばいいことがあるってことなの?」「そんなこと分かりませんけどね」「じゃ、どうして、あなた、この町へ来たのよ? よそ行ったって同じようなものよ。あたしが嫌いで、あたしから逃げ出そうっていうなら別だけど。そうじゃなかったら、お願い、しばらくでいいから、ここにいて。あたしを助けると思って」「助けるって何を助けるんですか?」「あなたに行かれたら小屋だって困るし、せめて後の人が見つかるまでいて。そうして、お願いだから」「ええ、いいです」(また明日へ続きます……)

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/