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フリッツ・ラング監督『死刑執行人もまた死す』

2014-05-25 09:38:00 | ノンジャンル
 本日はロバート・キャパの51回忌です。改めてご冥福をお祈り申し上げます。

 さて、フリッツ・ラング監督。共同原案・製作の'43年作品『死刑執行人もまた死す』をWOWOWシネマで再見しました。
 “ヒトラーの大虐殺に屈しないチェコの人々は、自由を求めて地下組織を結成。ナチスの侵略から祖国を守ると固く誓った。ラインハルト・ハイドリッヒ副総督は、ヒトラーの名のもとに恐怖政治を行ない、『死刑執行人』と呼ばれた。彼はプラハ城に総督府を置き、チェコ人を殺害する指示を出した”の字幕。工場におけるサボタージュに対し、見せしめの処刑をもっと増やすべきだと語る副総裁でしたが、工場の視察に向かう途中で銃弾を浴びます。マーシャ(アンナ・リー)は八百屋で買い物をしている時、ハイドリッヒを狙った犯人の男に会いますが、追ってきたゲシュタポたちに、男が逃げたのと逆の方向を指差します。それを陰で見ていた犯人の男。男は群衆に紛れ、映画館に入ると、「ハイドリッヒが撃たれた」との囁きが映画館の客の間に広がり、やがて拍手が起こります。ナチスの腕章をした男は「すぐ上映を中止しろ。誰が拍手を始めた? 全員の身分証を確認する」と言いますが、皆に殴り倒されます。男は“貸し室あり”の札のある家を訪れますが、外出禁止令が出た中なので入れてもらえません。帰宅したマーシャが「私、犯人を見た」と父のノボトニー教授(ウォルター・ブレナン)に言うと、父は「お前は何も見てない。婚約者のヤンにも言うな」と言います。
 男がレストランにいるとゲシュタポがやって来て「通達。店や施設は即刻営業停止。門限は7時。破る者は射殺」と言います。客の1人は「犯人はもう国境を越えてるだろう」と言いますが、別の客は「電車が動いてないし、国境は封鎖されてる」と言います。
 マーシャ宅を訪れたヤンは「今回の暗殺がさらなる流血を呼ぶ」と言い、マーシャは「大学では120人の生徒が命を捧げた。世界中に愛国心を伝えるために」と答えます。ヤンが帰り、入れ違えに花を持った犯人の男が入って来ます。「行く場所がなくて」と男。マーシャが男を部屋に入れると、すぐ母に見つかり、男は「バニャックです。建築家をしています。演奏会でお嬢さんと知り合いました」と嘘を言います。疑う父は辞去しようとする男に「もう7時を過ぎてる」と言い、母も夕食に誘います。
 夕食。父は「ハイドリッヒの暗殺は当然」と言い、マーシャも「犯人が逃げられてよかった」と言います。マーシャの弟のベーダがケガをし、止血し包帯を巻く男。ラジオからは「暗殺者を匿ったら、本人と家族を処刑する」という声が聞こえてきます。
 警部は、地下活動の情報を流しているビール業者のチャカ(ジーン・ロックハート)と話をしています。最新の人質名簿を見て「聖職者を攻めるのは最も効果的だ。説教に重みがある」と警部が言うと、チャカは「子供向けの詩を書いているネクバールがいい。チェコをドイツ化するには子供から」と答えます。
 犯人の男は揺り椅子で眠っていましたが、時計の音で起きます。教会の鐘の音でいつも目覚めるので、と男は言います。ノボトニー教授は「私の書斎のソファで寝なさい」と言い、マーシャは「父は共和国の創始者の1人なのです」と言います。
 八百屋の老女はマーシャを知らないかとゲシュタポに尋問を受けています。名前も家も知らないと嘘を言う老女。ラジオ「ハイドリヒ副総督の脊髄から銃弾3発が摘出された」。新聞「数名逮捕。暗殺への手がかり」。ラジオ「非協力的な市民は即逮捕」。ノボトニー教授は「単なる脅しだ。何もつかんでない証拠」と言いますが、そこへゲシュタポが来て「非協力的なチェコ人として、教授を逮捕する」と言うのでした‥‥。

 ゆっくりしたフェイドアウトの後の素早いフェイドインが、息せき切った感じを与え、またゲシュタポの仕草の異常さも非常によく演じられていて、戦時中に作られたとは思えないリアルさを感じました。蓮實重彦先生が“傑作”として挙げている映画の1つです。なお、上記以降のあらすじは、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Movies」の「フリッツ・ラング」の場所にアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/


藤野可織『おはなしして子ちゃん』その2

2014-05-24 04:59:00 | ノンジャンル
 工藤栄一監督・共同脚本の'83年作品『逃がれの街』をスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。島田紳助に兄貴と慕われる水谷豊が、16歳の恋人・甲斐智枝美を恋人の母(草笛光子)のヤクザのヒモ(財津一郎)に奪われ、そのヒモを殺し、そのヤクザの敵討ちに現れたヤクザも返り討ちし、男の子を拾い、その子の伯父を冬の白馬に訪ねますが、子の引き取りを拒否され、伯父を傷つけ、結局警察に射殺されるという話で、殺伐とした画面を音楽で叙情的に処理しようとしたところが見られ、殺される直前の財津一郎の指がブランブランになるところが印象に残りました。

 さて、昨日の続きです。
 動揺した私はトイレに駆け込むが、客は次々に現れ、トイレから飛び出した私は、その対応に追われ、化粧もできないままだ。私は最も輝いていた高校時代の知人で、今もSNSで交際が続いている友人たちの顔を思い出し、自信を取り戻そうとする。やがてフットサル帰りであるはずの夫の知人が、背広姿で現れる。そして私はマンションではなく邸宅の玄関にいることに気づき、続々とリムジンで現れる盛装した男女は私のことを褒めそやし、私の携帯に電話してきた夫も「パーティは大成功だ。お前、すごいよ」と言ってくれる。私が今夜のことをSNSで私を待ってるみんなに報告するのは、もうちょっとあとになりそう。だって、ホームパーティはまだまだこれからなのだから。
 『ハイパーリアリズム点描画派の挑戦』 「当現代美術館ではこのたび、『ハイパーリアリズム点描画派の挑戦』展を開催します。ハイパーリアリズム点描画派とは、点描画の技法を駆使して大画面のハイパーリアリズム絵画を制作した一派で、今、目の前にある物を写し取るため、対象は都市風景画か静物画に限られ、季節や時間による対象の変化も描き込み、それに相当の労力が費やされるため、画家は一生に一作しか残せず、またそれは皆未完の物になるのでした」。美大を卒業したが、今は食品会社に勤めているぼくは、この展覧会に行くが、いつものように絵画を身近から見るため乱闘となり、絵画を汚さないように付けることを義務化されているマスクに血を吐く。「当現代美術館ではこのたび、日本人2人目にして現段階ではさいごのハイパーリアリズム点描画家とされる篠原博の没後1年を記念し、『“今”と“リアル”を超える――ハイパーリアリズム点描画派の軌跡』展を開催します。本展覧会では、篠原の8年に及ぶ画業の成果である『当現代美術館展示室B』を初公開します。美大を卒業した後、食品会社に勤めていた彼がこの絵を描くきっかけとなったのは、当館で開催された『ハイパーリアリズム点描画派の挑戦』展でした」。
 『ある遅読症患者の手記』 ぼくの世界の本は生きている。書店に並んでいる間は休眠状態にあり、薄くて透明な膜を破り取り、表紙を開くと、芽が出て、やがて真っ青な花が咲き、その頃には読者はその本から手に入れうる最大の快楽に心を震わせている。そして花が咲ききって傷み出すまでに本を読み終わり、本が閉じられると、花は咲いた状態で永遠に生きる。しかしぼくのような遅読者は、花が咲ききってもまだ本を読み終わらず、そうすると、花はしおれ、字も溶け出し、本も崩壊し、その本の血によって、遅読者の顔や手には真っ黒い痣が残ることになる。痣は時間が経てば少しずつ薄くなって、いつかは完全に消えるという。しかし、ぼくはそれを待てず、知識と冒険を求めて新たに本を買い、痣を増やしてしまう。そして今、こうして書いてきたぼくのノートが本になったら、ぼくはその本を必ず手に取るだろう。そしてぼくはぼくの本を死なせることになる。ぼくの腕の中で、ぼくの本はおぞましい真っ黒な血を吐き、ぼくはその血にまみれて(後は真っ黒な血に染まったページが3ページ続きます)

 どれも想像力豊かな作品だと思いましたが、個人的な趣味で言うと、残酷な場面が横溢する多くの作品よりも、ファンタジックな『ホームパーティはこれから』が一番好きでした。

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

藤野可織『おはなしして子ちゃん』その1

2014-05-23 07:28:00 | ノンジャンル
 朝日新聞の特集記事で苅部直さんが推薦していた、藤野可織さんの'13年作品『おはなしして子ちゃん』を読みました。10の短篇からなる本です。
 『おはなしして子ちゃん』 私たちは小学生の時、小川さんの持ち物をよく隠して虐めていたが、小川さんは翌日には何もなかったように新しい持ち物を持ってきた。私は小川さんが理科室にある猿のホルマリン漬けを本気で怖がっていることを知っていたので、新たな虐めとしてそれを利用した。小川さんの縦笛をその瓶とすぐうしろの瓶のあいだにねじ込み、小川さんには猿が縦笛を持っていったのを見たと言ったのだ。小川さんが理科室に入ると、私は鍵をかけ、何事もなかったように教室に戻った。小川さんはその夜の11時に発見された。見つかった時、ホルマリン漬けの猿と向き合っておとなしくしていたそうだ。小川さんは一週間学校を休んだ後、登校してくると、私たちに「犯人はあなたたちと分かっている」と言い、「猿がさみしくてたまらないので、なんでもいいからお話をしてってせがんだので、いっぱい話をしてあげた」と言った。数時間後、私が1人で理科室に忍び込むと、小川さんが鍵をかけ、「猿の“おはなしして子ちゃん”の言う通りになった」と言って、去っていった。すると女の子の声で、ホルマリン漬けの猿が「おはなしをして」としきりに私にせがみ出し、私は頭に浮かぶありとあらゆる話をしていくと、猿はお話のおかげで元気になったと行って瓶から出てきて、故郷に帰るためにお前を食べて空腹を癒すと言った。私は思わず猿を抱きしめると、猿は風化して自ら崩れていった。それ以来、毎年、差出人不明の葉書が届くようになり、裏面にはよだれや果物の汁らしき染みと歯形がついているのだった。
 『ピエタとトランジ』 転校生のトランジは私が彼氏の部屋に行くために電車の中でスカートを着替えていると、「どうせすぐ脱ぐのに、なんでわざわざ着替えるの」と声をかけてきて、私の彼氏のことを全て言い当てた。「私の近くにいるとみんなろくな目に遭わない」とトランジは言い、その直後に私は彼氏の死体を見つけ、その後も通称ピエタこと私とトランジの周りでは人が次々に死に始め、生き残った生徒は登校拒否をするようになり、学校は臨時休校するまでになった。私が食べていたアイスが、私の膝に頭を預けていたトランジに垂れると、トランジは「死ねよ」と毒づき、私も「おまえが死ねよ」と幸せな気持ちで言い返すのだった。
 『アイデンティティ』 猿の上半身と鮭の下半身を縫い付け乾かして、人魚のミイラとして売られるはずだったのが、腕の悪い職人のために縫い付けた部分が見えた状態で乾いてしまった“人魚”が、箱に収められて1人きりになり、やっと自分が人魚である気がしてきたのに、箱を開けられて、また自分のアイデンティティを失い、結局、博物館で、「人魚のミイラ(猿と鮭の死骸を縫い合わせてつくったもの)19世紀・日本」というキャプションをつけられ展示されるようになるという話。
 『今日の心霊』 自分でシャッターを押すと、必ず鮮明な心霊が写るが、自分にはその心霊が見えないというmicapon17を、我々がSNSで保護し、彼女に自分のブログに載せる写真を撮らせ続けているという話。
 『美人は気合い』 滅びいく人類から胚盤胞を託され、生命体を求めて宇宙を漂う宇宙船であるわたしは、人工知能が壊れ、過去の時空座標も現在の時空座標もわからなくなっているが、胎盤胞を様々な形に変えて、「美しい、あなたは美人だ」と話しかけ続けるという話。
 『エイプリル・フール』 1日に1つだけ嘘をつかないと死んでしまうと医者に宣告されたエイプリル・フールの人生と、彼女が46歳になった時、彼女と知り合い、彼女の恋人となった女性の私についての話。
 『逃げろ!』 何者かに追われていると感じて、全速力で走り、通り魔殺人を行なう私が、ある日、やはり通り魔だった私の彼女に殺される話。
 『ホームパーティはこれから』 今まで素晴らしい人生を歩んできた私が、ヘッドハンティングされた夫の会社の知人を今日自宅に招くため、料理に腕を振るい、丹念に掃除をし、化粧もきちんとして夫のいい妻として彼らを迎えようと準備している。しかし、まだ料理が終わらず、シンクには汚れた食器が山となり、ジャージ姿で化粧もしていない時、知人らは現れ、私には目もくれず、食堂に行って勝手に食事を始めてしまう。(明日へ続きます‥‥)

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バズ・ラーマン監督『オーストラリア』その5

2014-05-22 08:47:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 ドローヴァー「乾季が来たら俺は牛を追う」サラ「でも今は雨季よ」。雨、降り出す。キスする2人。路上で雨に喜ぶ人々。カーニー、フレッチャーに「アシュレイは野蛮な先住民に殺されたのか? お前はうちの家族じゃない。財産は譲らんし、もし娘の身に何かあれば、お前は全てを失う」。雨の中、1人残されるフレッチャー。“オズの魔法使い”のラスト「やっぱり家が一番」のシーンを見るナラ。お互いに服を脱がし合うサラとドローヴァー。雨季のオーストラリアの風景。『ドローヴァーが言ったように雨で全てが生き返った。緑の豊かな土地が生まれて、僕らはファラウェイ・ダウンズに戻った。ミセス・ボスもドローヴァーもハッピー。オマワリのキャラハンもハッピー。彼はミセス・ボスのもてなしに目がくらみ、僕が見えなくなった。そして僕は生まれて初めての言葉を聞いた。“クリスマス”。それが過ぎると雨がやんだ。ドローヴァーは牛追いに出た。ミセス・ボスはとても寂しそうだった。でもドローヴァーは戻ってきた。キング・ジョージは言った。“ワニはいつも狙っている。用心しろ”と」。
 フレッチャーはカーニーを殺し、ワニに食べられたように擬装し、自分が後釜の社長となり、カーニーの娘を娶る。そしてサラの許を訪れ、ドローヴァーとナラを危険な目に会わしたくなければ、土地を売れと迫る。牛追いから戻ったドローヴァーは、大尉の要請でまたすぐに牛追いに出てしまい、サラと仲違いする。またナラはサラの反対にもかかわらず、大人になるための旅“ウォーク・アバウト”に出て、フレッチャーに捕えられてパーカー博士に手渡され、キング・ジョージも捕えられて、牢に入れられてしまう。やがて日本軍による真珠湾攻撃が行なわれ、米国が参戦、オーストラリアにも軍を派遣し、日本軍の南下が予想される。サラはナラを探しにダーウィンの街へ行き、島に連れていかれるナラと会うが、ナラを取り戻すことができない。一方ドローヴァーは同行しているマガリから「あんたはサラから逃げてる。このままではあんたの人生には何の物語も残らない」と言われる。
 やがて日本軍によるダーウィンへの爆撃が始まる。最初に爆撃を受ける伝道の島。燃える街、ダーウィンに着いたドローヴァーは、サラが爆撃で死んだことを知る。そして島の子供たちが全滅したと聞いて、単なる噂だと信じ、船を出す。島に着くと、ナラを含めて隠れていた子供たちが現れる。迫る日本兵から逃れるドローヴァーら。フレッチャーの妻の死体と間違われていたサラは、避難を強制され、トラックに乗せられようとするが、煙の向こうからナラがハーモニカで吹く“虹の彼方へ”が聞こえてきて、桟橋に駆け寄ったサラはナラとドローヴァーと再会する。妻を失い、財産も失ったフレッチャーは、子供たちが助かったのを見て、自分の不幸は全てナラのせいだと決めつけ、ナラを射殺しようとするが、それを見守っていたキング・ジョージは金属の棒を矢として放ち、フレッチャーを射抜いて殺す。
 ラスト。『僕は学んだ。物語を語る大切さを。それは人と人の心を結びつける』。ナラは、キング・ジョージの許へ。それを見送るサラとドローヴァー。“オーストラリア政府は北部地域の先住民に対する同化政策を1973年に廃止した。2008年、オーストラリア首相は“盗まれた世代”に正式に謝意を表明した”の字幕で、映画は終わる。

 俯瞰の移動とパンが多用されていて、前半の牛追いの場面はホークスの『赤い河』やフォードの『捜索者』を思わせるシーンがあり、まさに西部劇で、後半は画面的には退屈なシーンが多かったのですが、それでもラストでのナラとサラらの再会シーンはエモーショナルでした。“社会正義”や、それに伴う“希望”なども、映画のエモーショナルな部分に多分に影響していたのではと思います。CGを過剰にではなく、適切に使っている見本であるようにも思えました。

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

バズ・ラーマン監督『オーストラリア』その4

2014-05-21 08:34:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 水辺で死んでる牛。マガリ「奴らが毒を入れた」ドローヴァー「他の水は5日先だし、奴らが先回りしてる」ナラ「水場なら3日の所にも」「だがクラマン砂漠の先だ。人間が入れない土地だ」サラ「行くのよ」「無理だ。道標がない」ナラ「ボス、見て!」。キング・ジョージ立ってる。ナラ「おじいちゃん、水がほしい」「歌を歌おう。歌が5つの川の交わる所に連れて行く」ドローヴァー「先祖はあらゆる歌を作った。岩の歌、木の歌、すべて関連があって、まじない師、つまり“ガラパ”が歌うと、水に行き着ける。砂漠を越えてでも」。『僕らは3日歩き続けた。日一日、暑さと渇きが増した。限りない死の砂漠。激しい砂嵐に襲われた。最初に牛が‥‥そしてマガリとグーラジの足が止まって、皆動かなくなった。僕はガラパだ。まじない師で魔法使いだ』。
 新聞記事“クラマン砂漠で牛追いの一団が死亡”。婦人「全員死亡よ。パイロットが低空飛行で確かめたの」。新聞記事“レディ・アシュレイの遭難”。カーニー「いいか、大尉。俺には商売、君には食糧調達」とサイン迫る。大尉「戦争で儲ける奴が必ずいる」。大尉、サインするが、道に牛が現れる。やがて紅茶のカップが揺れ始める。牛の大群、街へ。サラ「皆さん、ファラウェイ・ダウンズのサラ・アシュレイです。最高のショートホーン種の牛を1500頭運んできたわ。追い込む所がほしいの」カーニー「一杯だ」大尉「私は食肉の買い付け責任者です」「カーニーの会社より20%安く牛を売るわ」「諦めろ、契約はサイン済みだ」「この発効は牛が積み込まれてからだ」「積み込め!」「こっちも積み込むのよ!」。ドローヴァー「俺がカーニーの牛を止める」。フレッチャー、門を閉め「諦めな」。フレッチャーの仲間、ドローヴァーを嘲笑う。ドローヴァーは柵を馬で飛び越え、フレッチャーらが1頭ずつ狭い通路で積み込むのに対し、広い通路で群れごと積み込み、笑う。町民の喝采を受けたサラは、フレッチャーの前で鞭を振るう。全頭を積み込み、酒場に迎えられるサラとドローヴァー。ラム酒で乾杯する2人。カーニーはフレッチャーに「奴らの牛は1頭も入れるなと言ったはずだ。ダメな奴め。彼女が舞踏会に出るかどうか確かめろ」。抱き合うサラとドローヴァー。『これで“めでたしめでたし”。皆願いがかなった。ミセス・ボスは土地を売って英国に帰れる。ドローヴァーにはカプリコルニア。僕以外は皆ハッピーだった。僕は白人でもなく、黒人でもない。僕はハーフ。“クリーム色”。僕は僕1人」。馬をしつけるドローヴァーにチャイニーズドレスのサラが近づく。「慈善舞踏会のゲストに招かれたの。主人の遺志を継いで、ファラウェイ・ダウンズを蘇らせるの。だから管理人が必要。あなたに頼めるわね。スーツも新調したわ」「待ってくれ。自分勝手に決めるな。俺は牛追いだ。誰にも雇われない」「舞踏会は?」「俺は黒人と同格の男だ。貴族はご免だ」「それが正しいとは限らないわ」「だが現実だ」。バンディ、ナラに「元気をお出し。料理人と映画を見に行こう」「ハーフの子だからオマワリに捕まる」「工夫すりゃいい。魔法を使えば」。バンディ、ナラの顔にススを塗る。
 “オズの魔法使い”を映画館で見るナラ。“伝道の島 慈善舞踏会”。歓迎されたサラは「伝道会のパーカー博士は?(大尉に)あの子を養子にもらえるように、博士にお願いして」博士「混血児を純血で野蛮なアボリジニーから引き離さねば。白人化します」「じゃあ母の悲しみは?」「アボリジニーの母は悲しみなど忘れる」「母が子のことを忘れるなんて! 父親は知らんぷり。無責任だわ。ここに父親が‥‥」。サラを憤慨した目で見る周りの婦人たち。カーニー、サラの踊り手の権利を500ポンドで買う。カーニー「土地を7万5千ポンドで買う」「子供が気がかり。住んでる人にも責任を負ってる」「住民の生活は保障する」「本当に? 信用していいの?」「契約書に書く」。ダンス終わる。「戦争の余波で水上機は明日が最後。契約書の準備をしていいんだな」。ドローヴァー、スーツ姿で現れる。サラ「ファラウェイ・ダウンズはやっぱり売らない。(ドローヴァーに)来たのね」「せっかくダンスを習ったんだ。これで街の噂になる」「まあ、大変」。踊り出す2人。大笑いするカーニーはビールを瓶でガブ飲みする。「逃げ出そう」。雷鳴。「今年も雨季が来る。美しい季節だ。ファラウェイ・ダウンズは島になる」(また明日へ続きます‥‥)

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/