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2014-09-01 | 市民のくらしのなかで

「防災の日」

 

人命優先で国は点検と対策を

 

 
 

 死者・行方不明者70人以上にのぼる甚大な被害を生んだ広島市の土砂災害の被災者救援と支援が急がれるなか、きょう「防災の日」を迎えました。日 本列島はこの夏も台風や記録的豪雨に襲われ、各地に大きな被害をもたらしました。地震、津波、火山の危険などもあり、日本のどの地域も災害とは決して無縁 ではありません。本格的な台風シーズンも迎えます。災害による犠牲者を出さないために、国・自治体は、いままでの教訓にたって国土と地域の危険箇所などを 総点検し、本格的な対策に全力をあげることが急がれます。

遅れる土砂災害対策

 

 広島市の被災地では、都市部に迫る無残にえぐられた山を背に、駆けつけたボランティアの救援活動が続いています。住宅地を襲った膨大な土砂やがれ き、大きな石などの撤去作業は難航を極め、1000人を超える人たちが不自由な避難生活を強いられています。「いつになったら普通の暮らしに…」―。被災 者の疲労はピークに達しています。住まい、健康、生活用品などの切実な要望にきめ細かくこたえることが急務です。

 

 山間地の多い日本では毎年平均1000件を超す土砂災害(土石流、がけ崩れ、地すべり)が発生しています。1967~2011年の自然災害の死 者・行方不明者(阪神・淡路大震災と東日本大震災を除く)のうち約4割を占めるのが土砂災害の犠牲者です。近年も和歌山、奈良両県(11年)や東京都・伊 豆大島(13年)で大規模な土砂災害が相次ぎ、多くの犠牲を出しています。地震や豪雪による土砂災害も目立ちます。地球温暖化による気候変動の影響によっ て記録的な豪雨が多発するなかで、土砂災害への備えを防災対策の大きな柱の一つに位置づけなければなりません。

 

 広島市で1999年に30人を超す犠牲を出した土砂災害の経験をふまえ、「土砂災害防止法」が制定され、全国的に対策を加速することが迫られてい たはずでした。しかし、全国約52万5000カ所ある「土砂災害危険箇所」について、広島を含む32都道府県で基礎的な調査も完了しておらず、避難計画の 策定や宅地開発や建物の制限も可能になる区域の指定などは、遅々としているのが実態です。

 

 広島の被災地では地元から砂防ダム建設の要望があったのに、間に合いませんでした。予算や人員不足が大きな原因です。財政・人的体制の強化を含め国が総力をあげて土砂災害の防止・避難対策を抜本的に強めるときです。

 

 国土交通省の検討会は土砂災害の特徴について、前兆現象が不確実で危険が切迫していることを現地の状況から判断するのは難しく「市町村にとっては、適切な警戒避難体制がとることが難しい災害」と認めています。自治体任せにできないことは明白です。

 

被災地に寄り添う再建に

 

 3年半を迎える東日本大震災の復旧・復興は大きく立ち遅れています。被災地に寄り添う生活再建・地域再生ができるかどうかは災害国日本の政治の試金石です。

 

 「防災の日」は、1959年に約5000人の犠牲を出した伊勢湾台風の翌年に、関東大震災発生の日にちなんで制定されました。国民の命を優先し、自然災害を「人災」にしないため政治の役割があらためて問われます。

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