韓国安保室、米国の傍受でセキュリティに「穴」…
尹大統領訪米前に「主権侵害」の難題
米国の情報機関が韓国の国家安保室の議論を傍受していた事実が、米国の機密文書によって明らかになり、韓米関係に波紋が予想される。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の26日の米国国賓訪問を控え、米国が韓国の「安保司令塔」を傍受したという事実が浮上し、両国関係に悪材料として作用するのが避けられなくなった。
今回外部に流出した米政府の機密文書には、2月前後に米軍首脳部に報告されたウクライナ戦況とロシア軍の動向が書かれている。戦争に関する中国の動向、北朝鮮の核・ミサイル開発状況、中東情勢なども一部含まれていた。米国防情報局(DIA)だけでなく、中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)、国家偵察局(NRO)などの主要情報機関が収集した情報が網羅されていた。米国の当局者らは、一部の情報は原本と違ってウクライナ軍の戦死者数が誇張され、ロシア軍の戦死者は縮小されるなど情報がいじられていることが確認されると明らかにした。しかし、ほとんどが国防部から流出した本物の文書であることが確認されている。
この中で特に目を引くのは、韓国、英国、カナダ、イスラエルなど同盟国から「秘密裏に」収集した情報が露出したという点だ。特に韓国国家安保室の議論を傍受したのが最も深刻な内容と把握されている。
この文書を通じて、韓国政府がウクライナに対する殺傷兵器(砲弾)を支援するかどうかをめぐり、相当な圧力に悩まされていたことが確認された。当時のキム・ソンハン国家安保室長は、米国の要求に応じた場合、時期的にこれを「尹大統領の国賓訪問」と取り引きしたと世論が捉えることを懸念したと記されている。結局キム室長は「ウクライナが砲弾を早く受け取ることが米国の究極的な目的」であるため、ウクライナに武器を渡すルートであるポーランドに砲弾を売ることを検討してみようという「窮余の策」を絞り出す様子も表れている。また、イム・ギフン国防秘書官がこの問題について3月2日までに最終的な立場を決めると述べたという言及もある。
さらに、イ・ムンヒ外交秘書官(当時)は、「この問題に関する明確な立場」がなければ韓米首脳の通話は困難だとし、ジョー・バイデン米大統領が尹大統領を圧迫する可能性を懸念するような発言もしたと記録されている。偶然にも、同文書に名前が登場したキム元室長とイ元秘書官は、尹大統領の米国国賓訪問を約1カ月後に控えた先月末に辞職している。
CIAが韓国大統領室に属する国家安保室の周辺を傍受することに成功したとすれば、韓国の「外交・安保司令塔」のセキュリティに深刻な穴が開いたことになる。韓米は密接な同盟ではあるが、利害関係の異なる敏感な懸案に関して、米国が韓国内の内密な議論を密かに偵察していたなら、韓国の国益は大きく損なわれることになる。さらに、韓国領土内で不法に傍受した可能性が濃厚であり、「主権侵害」の物議が起こるのは避けられない。ニューヨーク・タイムズは「傍受したという事実の公開は、ウクライナに兵器を提供するための支援を求めたい韓国のような国々との関係を害する」と伝えた。
米国は2013年にも、NSAが敵性国・同盟国を問わず広範囲な傍受を行ってきたことが明らかになっている。この組織に携わっていたエドワード・スノーデン氏の暴露で、米国がドイツのアンゲラ・メルケル首相(当時)の携帯電話まで10年以上にわたり盗聴対象とし、同盟国の大使館も盗聴していたことが明らかになった。NSAは2007年に韓国を「重要情報収集対象国」に指定したことがわかったが、当時も青瓦台(大統領府)が主要な情報収集対象だったという観測が出た。
米国は今回の文書流出によって情報源が露出し、外国の情報機関との交流が困難になる結果を迎えることになった。ロシアの場合、米国の情報力がロシア軍総情報局(GRU)にまで浸透したことが明らかになった。ある米情報当局者は「ファイブアイズ(アングロサクソン系国家と機密情報を緊密に交換する米・英・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの協力システム)の悪夢」とニューヨーク・タイムズに語った。さらに、米国が韓国などの不法傍受の被害国にどのような釈明を試みるかも注目される。バラク・オバマ大統領(当時)は2013年、メルケル首相に「盗聴の事実を知らなかった」としつつ謝罪した。さらに傍受プログラム改革案を出し、法も変えたが、同じ問題が起きるのを避けることはできなかった。
機密文書は2月末~3月初め、ゲーマーのチャットプログラムであるディスコードにアップされた後、テレグラムやツイッターでも流布された。米法務省は流出経緯を把握するための捜査に乗り出した。米国はロシアの仕業である可能性があるとみている。
訳C.M