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新聞赤旗主張
収容死訴訟で賠償
国の入管行政の根本問われる
外国人男性が入国管理施設で死亡した事件で、水戸地裁は先月、入管側が男性の救急搬送を要請する義務を怠ったことを認め、国に対し165万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。入管施設の収容者の死亡をめぐり、国に賠償命令が出されるのは初めてです。
症状悪化を放置した責任
この裁判では、茨城県牛久市の東日本入国管理センターで2014年3月にカメルーン人男性(43)が死亡した事件について、体調不良を訴えた男性を入管側が放置したとして、男性の母親が国に損害賠償を求めていました。
男性は13年10月に成田空港で入国が認められず、同年11月に東日本入管センターに収容されました。男性は糖尿病などを患っており、投薬を続けていたものの、体調は悪化しました。
14年3月27日からは、24時間監視カメラ下に置かれました。同月29日には英語で「死にそうだ」「胸が痛む」と症状を必死に訴え、自力で立てなくなっている男性の姿が録画されていました。
入管側は床に寝かせたまま放置し、同月30日朝に男性が心肺停止状態になっているのを発見してから病院に救急搬送しましたが、死亡が確認されました。
水戸地裁判決(9月16日)は、苦しんでいた男性について「尋常ではない状態」だったとし、「速やかに救急車を呼ぶべきだった」と述べました。入管側には「(被収容者の)生命・身体の安全や健康を保持するために社会一般の医療水準に照らして適切な医療上の措置を取るべき注意義務があった」と指摘し、心肺停止状態で見つかるまで搬送しなかった対応に過失があると認定しました。
昨年3月に名古屋入管でスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん(33)が、体調不良を泣いて訴え、外部の病院へ連れて行ってほしいと懇願し、支援者も点滴を求めていたにもかかわらず適切な医療を受けられずに死亡しました。この事件の真相はいまも解明されていません。
19年6月、長崎県の大村入国管理センターでハンガーストライキを行ったナイジェリア人男性(40代)が餓死した事件もありました。入管施設では過去20年間で17件の死亡事案が起きています。
各地の入管施設では、以前から体調不良を訴えても医師による診察を認めない上、診察までかなりの日数がかかるなど、被収容者の生命・身体の安全や健康にまともに向き合わない姿勢が批判されてきました。背景には、仮放免や入院の必要性について、外国人の人権と命を軽視し、正しい判断ができない入管の体質と入管法に原因があります。
入管法の抜本改正を
真実の解明と根本的な問題解決には、外国人の人権保障の観点にたち、司法審査なき無期限収容の廃止や「全件収容主義」の廃止など、入管行政そのものを抜本的に改めなければなりません。
昨年廃案となった政府提出の入管法改定案は、送還拒否への刑事罰の新設、難民申請者を強制送還する仕組みの創設など在留資格を認めない外国人に早期帰国を迫るもので、逆に人権侵害を拡大します。日本共産党、立憲民主党などが提出している入管法改正の野党案を柱に、入管行政の抜本的改革に踏み出すべきです。