マリウポリで最後まで抗戦したウクライナの「アゾフ大隊」…
極右イメージ払拭か
ナチスのマークも廃棄し、新たな部隊を創設
米国などの兵器支援禁止の解除のためか
ロシアがウクライナに侵攻した主な名分として掲げてきた極右性向の「アゾフ大隊」が再結成されていると伝えられた。
米ウォール・ストリート・ジャーナルは5日(現地時間)、2月末の開戦以降、激戦が続いたウクライナ南東部の拠点都市マリウポリで最後まで抗戦し、先月末にロシアに降伏したアゾフ大隊が、最近再結成されていると報じた。現在、かなりの数の隊員がロシアに捕虜となっている状態だが、新入隊員を積極的に吸収し、南部ザポリージャ州などで訓練を進めているという。ウクライナにおいてアゾフ大隊は、2カ月余りにわたる「マリウポリ抗戦」を率いた英雄として浮上している。
アゾフ大隊はさらに一歩進み、さらに過去の極右イメージを薄めるための努力も進めている。このような理由から、過激主義者と関係のない新入志願者が増えているという。彼らがエリート部隊として名声が高まったうえ、戦争に参加する近道だと思われるからだ。キーウ・シンフォニー・オーケストラでフルートを演奏していたブリャチェスラフ・ロディノウさん(29)は、現在アゾフ大隊で20人の兵士を指揮する部隊長だ。ザポリージャで同僚らと訓練を受けているロディノウさんは、ウォール・ストリート・ジャーナルに「ロシアの宣伝を信じるな」とし、「彼らは最大限アゾフを侮辱しようとし、私たちをナチスと呼んでいるが、本当のナチスはロシア軍」だと語った。
今回のウクライナ戦争で「論争の的」として浮上しているアゾフ大隊は、ロシアの2014年3月のクリミア半島併合後、東部ドンバス地域で親ロシア分離独立勢力が内戦を起こすと、政府を支援するために新ナチ極右勢力が結成した民兵隊から出発した。彼らはマリウポリを反軍勢力から奪還するのに大きく貢献し、同年11月、内務省所属の正式軍事警察組織に編成された。
しかし、正式組織になった後も民間人虐待論議を呼んだ。米国政府はこの組織の極右性向を問題視し、2015年に制裁を断行したが、翌年解除した。国連人権高等弁務官事務所は2016年の報告書で、彼らが拷問や民間人略奪などの犯罪を犯したと指摘した。
アゾフ大隊のイメージ変革の努力は、部隊マークの変更でも確認できる。英国のザ・タイムズ紙は、アゾフ大隊がナチスのイメージを払拭するために、旧ナチスが最初に使用していた「ヴォルフスアンゲル模様」(ドイツで使用されていた狩猟用の鉤を模した形)の部隊マークを廃棄し、三叉槍型の新しいマークを作ったと報道した。アゾフ大隊は、このヴォルフスアンゲルの模様について、キリル文字でIとNを合わせた形であり「民族の理念」を象徴すると主張してきた。しかし、ナチスが使っていたヴォルフスアンゲルを模したものだという指摘が絶えなかった。
現在、ウクライナ第2都市ハルキウに新たに結成されたアゾフ特殊部隊がこのマークを使用しているという。ウクライナ政府は、ハルキウのアゾフ特殊部隊はマリウポリのアゾフ大隊とは別だと主張しているが、新聞はアゾフ大隊を新たに命名しようとする試みにすぎないと指摘した。
アゾフ大隊がナチスの理念を受け継いだ極右勢力というイメージを払拭しようとするもう一つの重要な理由は、米国など西欧の支援を受けるためだ。現在、同部隊は極右イメージのため、西側の兵器支援が制限されている。米下院は2018年、アゾフ大隊が白人優越主義などに基づいたテロ団体だとし、米国の兵器や支援の提供を禁止した。当時この議会の決定を主導した民主党のジェイソン・クロ議員は、「現在はアゾフ大隊員と過激主義の関連性を示すようないかなる情報も見受けられない」とし「団体は変化し、進化する。戦争がその団体を変えたということもありうる」と述べた。