2024年8月13日(火)
パリ発鼓動
世界に届け 選手の発信
平和・女性の権利…
選手の平和の思いがこれほど語られた五輪があったでしょうか。
脳裏に焼き付いているのは女子走り高跳びの金メダリスト、ウクライナのマフチフ選手の言葉。「ロシアに殺された選手は、競技をすることも私の優勝を喜ぶこともできない。このメダルはウクライナとすべての選手に贈られた勲章」。戦争を許さないとの強い意志がにじんでいました。
柔道に出場したパレスチナの選手は、「ガザの人々は愛する人や家を失ってもくじけない。私たち選手も屈しない」と訴えました。
スタンドからはコールが湧き、観客と共鳴し合う場面もありました。厳しい現状を憂える選手の“心の叫び”。世界に届けと願っていました。
男女選手が同数となった初の大会。女性の権利を訴える姿もありました。驚いたのは、ブレイキン女子でアフガニスタン出身の難民選手団、マニジャ・タラシュ選手でした。
ダンスの途中で着ていたスエットを脱ぎ、水色のマントが翻る。「アフガン女性を解放せよ」とありました。「やりたいことも勉強もできないアフガン女性の助けになれば」。訴える姿は誇らしげ。政治的な宣伝を禁じる五輪憲章に反し失格となったものの、観客や対戦相手から大きな拍手が送られました。
大会中、ウクライナやパレスチナで戦火は続き、国連決議の「五輪休戦」は実現しませんでした。戦争を続けるロシアやイスラエルの参加問題は今後も議論が続くでしょう。しかし、選手が心の底から発したメッセージの数々は、「平和の祭典」の姿そのものだったと思います。(山崎賢太)