どこまでだって歩いていけるさ

2012年1月22日 それまでの日記を引き連れてOCN Cafeから移住。
新しい扉の向こうには何があるのだろうか。

図書館で文庫本を貸し出すのは問題ありか

2017年10月12日 | 日記
「文芸春秋の松井清人社長が 売り上げ減少が続く文庫本について図書館での貸し出し中止を要請する」というニュースを見た

確かに出版業界の衰退が言われるようになってから久しい

以前にも 業界不況の一端はベストセラーの複数本をそろえる図書館にあるという出版社の主張に対し 図書館との間で議論になった

作品を生み出す作家の労力への対価は当然きちんと支払われるべきで 基本的には本が売れなければそれを生み出すことはできないから 言わんとすることはわからないでもない

しかし「文庫は自分で買うという空気が醸成されることが重要」と言われると 諸手を挙げて賛成する気持ちにはなれない

私は子供の頃から最近まで 手頃な価格と携帯性 場所を取らないサイズということから 多くの文庫本を買って読んできた

最近では文庫本書き下ろしという作品も多くなり それが文庫本の価格を押し上げたということもあるのだろう

今日 文庫本といえどもワンコインで買えるものなどほとんどなく 1000円に近いものやそれ以上の本も数多くある

全ての作品が買ってでも読みたいものか そして長く手元に置いておきたい作品かどうかを考慮するのは当然だろうと思う

しかも 毎月数多く出版される文庫本の全てを各図書館が購入しているわけもなく 自分が読みたい本もそうそうはない

それでも今まで縁の無かった作家の本を図書館で手にしたことがきっかけで 新しい愛読者となり また将来の購買者となることだってあるはずだ

それは 私のように本に慣れ親しんできた先の無い人間ではなく これからまだまだ人生が長く続くであろう若者ということもありえる

しかも文庫本は絶版になるのも早く 読みたいと思ってもなかなか入手できないものもある

色々な事情から本を処分した私ではあるけれど 「文庫本くらいは自分で買って読め」というよりもむしろ 「本来 本というものは自分で選び 買って読むのが一番楽しい」のだと思っているし できるならそうでありたい

おそらく 読書が好き 本が好きという人であれば 皆同じ気持ちだろうと思う

ブックオフに行くと 本好きな人が自分の読みたい安い本を物色する姿をよく見かける

古本に関しては著作権は問われないので 一度書店から買われた本はいくらで売られようが問題は無いのだ

普通の町の図書館の開架式の棚には 大型書店のようによりどりみどりで本が並んでいるわけではないし 文庫本にしても同じことだ

図書館で本を借りることが多くなった私だが それでも本当に読みたい本にはなかなか出会わないし(そういう本であればむしろ買って読みたいと思う) それは文庫本にしても同じことだ 

図書館があるから本が売れなくなったわけではなかろう

その程度の本だからということだってあるのではないか

ベストセラーほど早くに古本となり それを待って買う人もいる

それもまた本の流通に変化をもたらした原因のひとつではないか

本が売れなければ作家の生活は成り立たない(勿論 出版社もだろうが)

それがどんなに芸術的に優れていようがだ

けれどもまたどんなかたちであれ 一人でも多くの人に自分の作品を読んでもらいたい 共感や感動や歓びを与えたいと思うものが作家だろうと私は想像している

枕や炊きつけの代わりに使うのであっても良いからとにかく買って欲しいと思う作家がいたら それはもう作家と呼ばれる人では無いだろう

本が売れない時代になったとしても それが図書館に置かれた文庫本のせいだなんていうのはとんでもない言いがかりのように 私は思っている

コメント (4)
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