夏に予約した図書館の本2冊はまだ順番が回ってこないのだが 先日 別の本を1冊予約したらさっそく昨日届いたので 買い物ついでに受け取ってきた
フランスの「ドゥマゴ賞」 その精神を受け継いだ日本の「Bunkamuraドゥマゴ文学賞」の今年の受賞作品である『あなたに安全な人』(木村紅美著)である
この賞のユニークなところは 毎回異なるたった一人の選考委員によって決められるところにある
当然 その選者の個性が反映されるだろうが 誰が何を選ぶのかも興味のあるところ
今回はロバート・キャンベル氏と知って この受賞作を読んでみようと思った
150ページほどの作品なので すぐに読み終えることができた
―人を死なせた女と男の、孤独で安全な逃亡生活――。3.11直前の少年の死をめぐる海難事故と、沖縄新基地建設反対デモ警備中の出来事が、「感染者第一号」を誰もが恐れる地で交差する。―(出版社である河出書房新社からの引用)
これがこの本の内容である
コロナという言葉は出てこないが 「感染・消毒・マスク」といった言葉から 現在の話であることがわかる
「妙」という中年女性と「忍」という青年が ほとんど接触の無い同居生活を送ることになるのだが あえて疎外感の中に身を置くことを望んでいるようでもある
人を死なせたといっても 明らかな因果関係があるわけではないのだが それはもしかしたら 誰かの死に対してひとはどこまで無関係だと言えるだろうか ということを考えさせられる
「安全」な人であって 「安心」な人ではないところも気になる
二人の間にはほとんど何も生まれないが その関係性こそが安全なのだ
ちなみに 二人の名前が「妙」と「忍」なのは 「たえしのぶ」ということか?
読者それぞれが違った感想を持つのではないかと思うような小説
この先の二人がどうなるのか 想像するのも面白いかもしれない(怖いかもしれないが)