昨日 『広重ぶるう』を読み終えた
美人画や役者絵では長く芽が出なかった重右衛門(広重)が ようやく名所絵で売れるようになるまでの葛藤や絵描きとしての矜持を描いた作品
あるがままの景色を描いただけの名所絵は格下と思われていたが 広重にとってはただ見えるものだけを描いたわけでない
それらしい場所と見えながらも実際とは少し違うものであり 人物や風物・景色を天気や時間 空気感さえも緻密に構成して描いた心象風景ともいえる
自分が描きたいものを描きたいように描く
大好きな江戸の町と頭上に広がる明るい青い空を
その江戸が大地震で壊滅的な姿になったのを見て かつての生き生きとした町を絵の中でよみがえらせよう それこそが絵描きである自分の使命だと感じるあたりは ちょっと感動的
登場人物に悪人がいないのも 最後の重右衛門の死をはっきりとは書かずに 先に亡くなった人たちと大好きな朝風呂に入っているかのように描いたところも 青い空のような清々しい読後感につながっている
この頃 図書館の本を予約するのが癖になり始めていて 昨日も一冊ポチっと
少し前にラジオで紹介されていた作品で 11日に本屋大賞の「ノンフィクション本大賞」を受賞したばかりのものだ
『広重ぶるう』を返却して かわりに先日ポチった『ジャンパーを着て四十年』を借りてきた
まさに自転車操業になりつつある