熟年新米弁理士のひとり言

平成18年に59歳で弁理士試験に合格した企業内弁理士です。弁理士試験、企業での知的財産業務について、気軽にお話します。

懲罰的損害賠償?

2007-10-09 18:29:55 | Weblog
最新のネットニュースに、「米ミネソタ州の連邦地裁陪審団は5日までに、同州の女性がインターネットのサイトから楽曲を違法にダウンロードし著作権を侵害したとして、ダウンロードした24曲について1曲当たり9250ドル(約100万円)の損害賠償を命じる評決を下した。」という記事が掲載されていました。

それにしても、1曲当たり約100万円とは驚きの金額です。
どう計算しても1曲の損害が100万円になることはありえず、結局、懲罰的損害賠償額が適用されたのでしょう。

私も修士論文「知的財産権の損害賠償制度の研究」作成のときに、各国の損害賠償制度について調査・分析しましたが、米国の損害賠償制度は特異なもので、日本・欧州の制度と大きく異なっています。
特に、懲罰的損害賠償制度は、日本の損害賠償制度(民法709条)とは大きく異なるもので、本来、刑事罰が担うべき役割の侵害抑止機能を損害賠償制度に担わせたものと考えられています。

日本の裁判例でも、特許法102条1項を適用して、かなり高額の賠償額が認められるようになってきましたが、それでも、民法709条の「逸失利益」の範囲内にあるものです。

日本でも懲罰的損害賠償制度を導入すべきであるという意見もありますが、今のところ少数意見です。

今回の米国の裁判は、同記事によると、「訴えはソニーBMGミュージックエンタテインメントなど米音楽大手6社が起こした。個人に対し業界が起こした米国の訴訟で、本格審理が行われた初のケースという。これまでは和解に至る例が多かったが、女性は違法ダウンロードを否定して争っていた。
賠償額は、欧州で和解に至った事例の平均支払額より80倍近い高水準という。24曲分の賠償総額は22万2000ドル(約2600万円)。」という、見せしめ的要素がかなり強いのではないかと思われます。

個人に2600万円の賠償命令。
果たして、この賠償額は妥当か否か。
これから活発な議論が展開されることでしょう。



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