熟年新米弁理士のひとり言

平成18年に59歳で弁理士試験に合格した企業内弁理士です。弁理士試験、企業での知的財産業務について、気軽にお話します。

発明者の認定

2007-04-08 00:16:39 | Weblog
職務発明の対価訴訟の増加、発明者の権利意識の向上等により、ここ数年、発明者の認定について関心が高まってきました。
私が研究者として発明を創作し、特許出願を行っていた15年程前は、現在と異なり、職務発明の補償金についての意識はそれほど高くなく、褒賞金、つまり会社からのご褒美という考え方が主流だったと思います。したがって、発明者の認定はそれほど厳格ではなく、むしろ同じ研究グループのメンバー全員を発明者として認定して、仕事上のモラルを向上させることを第一に考えていたように思います。
3年前に特許法35条の改正に伴い、職務発明規程を改正し、従業員への説明会を開催した際にも、発明者をどのように認定するのかという質問がかなりありました。
発明者の認定は、かなり難しい問題です。一般的には、「発明の創作に実質的に寄与した者で、アイデアとその実施化との過程での寄与を考慮して決定する」と言われています。しかし、この定義では、実務に利用することはできませんので、裁判例の分析、論文の検討を行いました。
発明者の認定については、日本での検討例はそれほど多くなく、米国の検討例が参考になりました。ただ、実務に適用できるほどの具体的な基準を得ることはできず、結局、自社の発明に合致した基準を作成することになりました。
約半年間、自社の発明を技術分野別に層別し、更に各技術分野を3段階に層別して、発明の成立過程・発明者の寄与度をできるだけ具体的に特定することにしました。この作業はかなり時間のかかる、面倒なものでしたが、効果は高かったように思います。つまり、自社の発明の成立過程を技術分野とその企業特有の状況による分類(2~3段階程度が良い)とに層別して分析することにより、発明者の認定基準をかなり具体的に作成できると思われます。
いずれにしても、100%の基準の作成は不可能ですから、70%程度を目標に、半年程度で作成して、運用後に改正を繰り返す、という方法が良いのではと思います。
私が作成した基準を研究開発部門に説明したところ、多くの質問がありましたが、概ね良好な反応でした。それから3ヶ月に一度改正するようにしています。この改正作業のプロセスと結果を研究開発部門に公開していますが、これもかなり好評です。
知財担当者は神様ではありませんから、研究開発部門の力を借りて改善していくことが重要です。
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箱根

2007-04-06 21:16:46 | Weblog
箱根に家族旅行に行ってきました。妻、息子夫婦、孫との一泊二日の旅行です。
写真は、恩賜公園の展望館から見た芦ノ湖です。



旅行の前日までは、花冷えで雨混じりの天気、箱根では雪が降ったそうです。しかし、この二日間は旅行日和の晴天でした。究極の晴れ女(妻)のお蔭です。感謝、感謝。
宿泊は、箱根ハーベストクラブ甲子園。
健康保険組合の契約ホテルで、安価に宿泊できます。外観の美しさ、従業員の質の高さ、料理の美味しさ、どれをとっても一流です。
この旅行は、孫と一緒に遊ぶ二日間でした。甘えん坊の孫が、両親がいなくとも、泣かずに私と一緒に遊んでいました。この二日間で大分慣れたようです。孫と遊ぶには体力が必要ですが、今回の旅行ではそれほど疲れずに、楽しく過ごすことができました。
今度は何処に行きますか。楽しみです。
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先使用権

2007-04-04 21:02:51 | Weblog
特許庁から「先使用権制度の円滑な活用に向けて」というガイドラインが出ています。これは、企業が戦略的なノウハウ管理を行うための指針を示すことが目的だそうです。特許出願が公開され、公開公報を見た人が模倣して製品を製造販売する(主に中国、韓国の企業だそうです)ことにより、特許出願人が不利益を被っていることが背景にあるそうです。
私が勤務する企業の製品・技術を対象として、企業が先使用権制度を活用する際の問題点を検証することにしました。先使用権の成立要件は、①対象特許の出願前に、自ら発明を完成しているか、又は完成した者から知得したこと、②対象特許の出願の際に、日本国内で発明の実施である事業をしているか、又は実施の準備をしていること、③実施又は準備をしている発明とイ号物件との間に発明の同一性があること(発明の範囲内)、④実施又は準備をしている発明の実施行為とイ号物件の実施行為との同一性があること(事業の範囲内)、です。
先使用権の成立を立証することはかなり困難で、特に、②と③の立証が困難です。②と③の立証の困難性は、時間の経過とともに増大します。
結局、特許出願が公開されることにより受ける不利益が大きいノウハウに限って、例外的に先使用権制度を活用するという提案をしました。
先使用権は、対象特許の技術的範囲に属することを認めた上で、侵害ではないと抗弁するものなので、先使用権が認められることが確実な場合以外は、主張することは難しいと思われます。
先使用権制度の活用は、慎重の上にも慎重に実施した方が良いと思います(特許庁の意向とは反しますが)。
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司法試験

2007-04-03 23:20:39 | Weblog
Wの司法試験基礎講座のガイダンステープを見てきました。Wの受付でガイダンステープを見たい旨のお願いをしましたところ、「どの先生の基礎講座ですか」と尋ねられました。最初は、質問の意味が分からず、「基礎講座です」と言ったところ、「基礎講座は4講座あり、それぞれ講師が異なりますので、どの講師の講座を受けたいのかを決めてからガイダンステープを見て下さい」とのことでした。弁理士基礎講座とは大きく異なりますね。この違いは、受験生の数の違いなのでしょうか。
どの講師が良いのか分からないので、ストレートに「どの講師が良いのですか?」と尋ねると、さすがに返事に困っていました。しばらくして、責任者の方が出てきて、「○○先生の講座が評判いいですよ」と説明してくれたので、その講師のガイダンステープを見ました。評判通り、歯切れの良い、自身に溢れた説明で、第一印象は合格です。
講師の方は、司法試験の山場は論文試験なので、短答試験で時間をとっていてはいけません。なるべく早く論文の勉強をするようにとのことでした。これは、弁理士試験と同じですね。司法試験の場合、憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法の6科目で約2000の論点があるそうです。弁理士試験の論点数はどのくらいあるのでしょうか?2000はないように思います。さすがに難関な試験です。挑戦のし甲斐があります。
5月開講なので、4月下旬に申し込んで、連休明けから受験勉強を開始することになりそうです。
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TUVALU

2007-04-02 19:38:19 | Weblog
TBS「夢の扉」『『TUVALU』のことを世界中の人に伝えて行きたい』を見ました。
遠藤秀一さんという写真家が、ツバルを海に沈めないために、2010年までにツバルのことを世界中の人に伝えたいと、活動している姿を紹介した番組です。
ツバルが地球温暖化の影響で海に沈むということは知っていましたが、実際の映像を見てショックを受けました。
地球温暖化に伴なう海面の上昇で、サンゴで出来た島が危機に直面しています。このまま温暖化が進めば、南太平洋にある島国「ツバル」と隣りの「キリバス共和国」は確実に海に没し、そこに住む人たちは地球初の環境難民になるといわれています。
先進国の人々が快適な生活を送るために「ツバル」の人達が犠牲になるわけです。「ツバル」の政府関係者が、「ツバルを海に沈めないで下さい。ツバルも皆さんと同じ地球上に存在しているのです」と訴えていました。この訴えは深刻で多くの人の胸を打つことでしょう。
私は、自分と家族の幸せを第一に考え、「ツバル」のことを考えることはありませんでした。この番組を見て、私も何かしなければという想いに駆られました。私は、遠藤秀一さんのように人生の大半を地球温暖化防止に捧げることはできません。自分の時間とお金の何%かを地球温暖化防止に振り向けることから始めようと思います。無理をしないで長く続けることしか私にはできませんから。
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職務発明

2007-04-01 11:41:41 | Weblog
先日、研究会に参加するために横浜に行ってきました。久しぶりの横浜でしたので、昼食は中華街で中華料理を堪能しました。
研究会の話に戻ります。この研究会は、弁護士、弁理士、企業の知財担当者、大学助教授等の10名程度で構成されている私的な研究会です。月に1回、横浜、早稲田、市ヶ谷で開催しています。研究会は、参加者が興味のあるテーマを持ち回りで発表し、討議を行うというもので、実務に必要なテーマ、学説上の論点、法改正の必要性等興味あるテーマが議論されます。
今回は、私が「職務発明」について報告しました。特許法35条の改正に伴い、各企業で職務発明規程の改正、従業員との協議等が行われました。私が勤務する企業でも3年程前に職務発明規程を改正し、従業員との講義を行いました。この規程改正は、私が中心となってタスク活動で行いましたが、規程改正案の作成、従業員との説明会(8事業所で説明)の資料作成、FAQ作成等、ほとんど一人で行いましたので、大変な作業でした。その上、説明会での質問に対する回答(説明は他のタスクメンバーにお願いしました)も私が行いましたので、説明会が終了するまで気の休まることはありませんでした。
この規程改正作業で良かったことは、職務発明に関する論文をほとんど読破し、特許法だけでなく、職務発明と関連する民法、労働法の勉強もして、特許法、民法、労働法の学者、研究者との議論をする機会を得たことにより、職務発明について豊富な知識と経験を獲得できたことです。これは貴重な財産です。
今回の研究会では、職務発明の規程改正における実務上の問題点を報告しましたが、報告の主要部分は、「包括的クロスライセンス契約における相当の対価」です。これは、日立製作所最高裁判決、キャノン東京地裁判決で、「包括的クロスライセンス契約における相当の対価」に対する裁判所の判断が出たので、この判決を分析して、規程改正上の留意点、を述べたものです。活発な討議の後、弁護士と労働法研究者から、特許法の解釈だけでなく、民法、労働法を考慮したバランスの取れた改正案であると、お褒めの言葉を頂きました。
この研究会に参加することは、自分のスキルを向上させる上で大変重要です。企業内の狭い世界で自分のスキルの高さに自己満足しているだけでは、本当のプロにはなれないと思います。やはり他流試合で揉まれ、自分のスキルの足りなさを実感することが必要です。
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