常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

層雲峡 黒岳

2012年10月11日 | 旅行


層雲峡の自然を、深田久弥は『日本百名山』の中で紹介している。
「ふと見上げると、すぐ頭上に黒岳のこごしい岩峰のそそり立っているのも見事だし、柱状節理の岩壁が数キロも続いて、そこに幾条も大きな滝がかかっているのも素晴らしい。大函・小函という長いゴルジュなど、はじめてこの谷に分け入った人々にはどんなに驚異だったろう」

旭山動物園を後に、北見へと通じる国道38号線を東へ走り、層雲峡へ向かう。層雲峡の温泉街を過ぎると、トンネルの脇にかつての道が廃道になって見え、その向こうに板状の岩盤が聳えている。滝の見えるところで車を止めて、川ふちの散策路を歩く。子どものころの記憶は薄れてしまい、ほとんど初めて見る滝である。散策路だけで3筋の滝である。空から落ちて来る滝とは、これを言うのだろう。切り合わせたような岩肌から、水が噴出しているような躍動感だ。

大函にきて廃道になったトンネルを見る。向こう側の入り口が、小さく見える。柱状節理にへばりつくような旧道は、やはり通るのに危険を感じるだろう。かっての土産店は姿を消し、車を止めて散策する人々の表情ものんびりとしている。昼食は英の手打ちそば。田舎盛りは、山形のあらきそばを思い出す。



泊りは朝陽亭、547号室。ホテルに入るころから本降りの雨になる。窓からのロケーションも雨に霞んで風情はあるが、少し残念だ。雨のなかで露天風呂に入る。頭に冷たい雨がかかるが、身体は温泉に温められてほかほかとしている。北の観光地でゆっくりと浸かる温泉に身も心も癒される。夜の懐石料理も、大勢で楽しむには上々である。



7日午前6時。降り残った小雨のなか、ロープウェイで黒岳5合目へ登る。その先は、リフトと登山道があるが、ここでの散策にとどめる。雨が上がり、展望台からときおり黒岳がそのこごしい姿を見せる。

日ざしが戻って山がきれいに見え出したが、カメラのバッテリーがなくなり撮影はここまで。「この先のトムラウシで8人の死亡者を出す遭難があったんだよ」従弟の一人が言った。2009年7月14日のことだ。この日、大雪山山系は悪天候に見舞われた。東京のツァー会社が主催したこの登山には、18名が参加、内10名は中高年の女性であった。

2泊3日の入山で、旭岳からトムラウシを縦断するコースであった。事故の前日の雨で、一行の体力は消耗していた。「ここで登山を中止して」という参加者の声も届かず、風雨のなかで体温を奪われた7名の女性が命を絶った。
黒岳のこごしい山肌を眺めながら、その眺望の美しさのうらに、厳しい自然の猛威があることを、いまさらのように感じとった。


コメント
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