常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

コリアンダー

2012年10月24日 | 読書


電子ブックを初めて買った。小川糸の『つるかめ助産院』だ。夏にこの人の『食堂かたつむり』が面白かったから、電子ブックの第1号をこの本に決めた。もう一冊、森沢明夫の『あなたへ』も買った。高倉健で映画化されて話題を呼んでいるからだ。北海道の姪たちも、この映画は一見の価値があるよと、勧めていた。

『つるかめ助産院』を読み始めてすぐうれしい話が書かれている。この助産院にはパクチー嬢と呼ばれるベトナムからやってきた研修生がいる。タイやベトナムでコリアンダーのことパクチーと呼んでいる。彼女はこの産院の賄いも担当している。

「そして面白いことに、テーブルに並ぶ料理のすべてに、これでもかというくらい、新鮮なパクチーがのせられていた。そうか、だからパクチー嬢と呼ばれているのか。むしゃむしゃと大量のパクチーを口に含みながら、私は妙に納得した。実はこれまで、サラダなどにパクチーが添えられていると、決まってその緑色の物体をよけて食べていた。味というか、あの生臭いような匂いが苦手なのだ。それなのに、なぜかこの南の島で食べるパクチーは苦にならない。新芽なのか葉っぱが柔らかく、あの独特な香りが口の中でふわりと広がり癖になる。体に涼しい風が吹き抜けるようだ。」

いま私の畑で成長を始めたコリアンダーが、『つるかめ助産院』に書かれているのでうれしくなった。それに加えて、産院での出産のシーンも迫力満点に描かれている。この本を買ってよかったと思った。電子ブックは、入手が至って簡単である。辻村深月もあさのあつこも三谷幸喜も古典も、クリック一つですぐに購入できる。本屋の棚に当たらなくとも、芥川賞の作家の本も、絶版になった古典も無料か数百円で読める。実に便利な読書生活が実現しつつある。家に作りつけた本棚を見ながら、もうこんなに手元に本を置かずとも、小さくてたったひとつのブックリーダーの中に何百冊の本を持ち歩ける時代になったのだなあと思う。
コメント
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