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七ヶ宿ダムの裏側に、山の右側が鋭く切れ落ちた山がある。それが寒成山だ。ガーミンの登山地図にも、グーグルマップにも名前が載っていない山である。地元の山の愛好者もめったに訪れない静かな山域だが、付近に材木岩や七ヶ宿湖などの景勝地がある。写真は寒成山の頂上から、南蔵王の不忘山を展望している。
七ヶ宿は山形の奥州街道と羽州街道を結ぶ宿場町で、山中に上戸沢、下戸沢、渡瀬、関、滑津、峠田、湯原の七つの宿場が置かれたことから、この名が付いた。今もこの集落は、かつての面影をとどめている。だが、山道のため交通は幹線道路に奪われ、集落は過疎化が進んでいる。その分だけ、自然と昔の面影が残されているということか。春の新緑、ミズバショウ、秋の紅葉が楽しみである。
沢筋の日陰になっているところで、キノコを見つけて採集する。杉林ではスギヒラタケ、広葉樹林帯ではサクラシメジ、アミタケ、ハタケシメジなど、今年の初物である。この秋は少雨と残暑でキノコの出には悪条件が重なり、不作であるが、秋の味覚が採れたので参加者一同感激である。
キノコを採るようになったのは、この山の会で山登りをするようになってからだ。ある年、甑山の林でサワモダシが群生していて、リュックに入り切れないほどの収穫があってから病みつきになった。このサワモダシは味噌汁にしても、ナメコより美味しく感じる。
山形の民話にキノコの化け物の話がある。
ある古寺に夜毎に化け物がでた。この化け物はカラカサをさして、本堂前の広場で踊りをおどる。 ガラドン、ガラドン、スッガラドン!と調子よく躍って姿を消すが、毎晩のことなので和尚も困って考えた。裏の畑から茄子を2,3個取ってきて、踊っている化け物めがけて投げてやった。すると化け物は悲鳴をあげて山へ逃げ込んだ。翌朝、和尚が山に登ってみると、大きなキノコが倒れていた。
茄子とキノコは料理の相性がすこぶるいい。キノコ汁に茄子を入れれば最高の取り合わせだ。そんなところから、こんな話ができたのか。面白い。話は横道にそれたが、寒成山は往復2時間半の秋を楽しむ山であった。