
借りている畑のお嫁さんは気さくな人で、知っていることは何でも話してくれる。畑の隅に地主さんがタチアオイを移植した。この花の成長は実に驚くばかりだ。植えて2週間もしないうちに人間の背丈の半分くらいになり、いまでは背丈を追い越してしまった。花の蕾は茎の下の方から先端に向かって交互に付けていく。お嫁さんは「この花が先端まで咲ききると、梅雨があけるよ」と教えてくれた。
この花は懐かしい。北海道にいた子どものころ、庭先に数株のタチアオイが咲いていた。友達に遊びに来て、花びらを取ると下の方を割いて鼻に付ける。そしておどけながら、「ケッケッ、コケコッコー」と鶏の真似をして走り廻った。他愛のない遊びなのだが、そんな思い出がこの花が咲くたびに思い出す。そのため、この花を「コケコッコ花」とも読んでいた。大きな花が密集して咲くので、遠くから見ても、この花が咲いているのが分る。
蝶ひくし葵の花の低ければ 富安 風生
花の蜜を求めて蝶々はひらひらと飛んでいる。畑に蝶の飛ぶ姿は実景だが、花に蜜を求めながら、同時に青菜に卵を産み落とし、やがて葉野菜は穴だらけになってしまう。こんな穴だらけの野菜は売り物にならず、八百屋さんの店頭には決して出ないが、茹でてしまうと、何の抵抗感もなく食べられる。農薬を使ったきれいな野菜には、残留農薬の危険も伴う。