
朝まで雨が降った。棚田の緑が一段と濃くなっている。棚田の風景を見るたびに、山間部で田を作ってきた先人の労苦が偲ばれる。同時に、その風景は、なぜか懐かしさをともなった感慨を呼び起こす。棚田の上の方には、沢を流れる川の流れを引いて、ため池が作られている。そのため池から、水路を巧みにめぐらして田に水を入れる。そんな水の管理が棚田の基本である。旱魃の年には、水をめぐって集落の間に争いが起きるのも珍しいことではなかった。
山形県には日本の棚田百選に選ばれた棚田が3つある。椹平(朝日町)、大蕨(山辺町)、四ヶ村(大蔵村)である。四ヶ村棚田のホームページに「耕して天に至る」という言葉が記してあった。急峻な土地を耕した棚田を見ると天までも続くような壮観。それが棚田の景観であるが、その地ににはそこを耕した人々の汗と涙が滲みこんでいる。棚田を見て懐かしい感慨にとらわれるのは、そうした先人の末裔として今を生きているからであろう。
このごろ、畑の除草をしながら土に触れていると、心がやすらぐように感じる。自分がいじっている畑は、たとえようもないわずかのものだ。だが、そこで、季節が移り、植物が育ち、それをめがけて鳥や鼠、虫にいたるまで多くの生命がせめぎあう。そうしたものに直に触れることで、自分が自然に溶け込んでいる感じがする。そのことによるやすらぎ感である。強い太陽の陽に焼かれ、蚊にさされながら、全身に止まらない汗を流しながら、棚田を耕した先人にほんの一歩近づいたという安堵感だ。
ズッキーニが生長中だ。収穫は昨日4本、今日5本。花が次々に咲く。毛筆で雄花の花粉を雌しべに受粉させる。