光禅寺の庭にホタルブクロが咲いていた。日ざしの強い日中に見ると、すこしボケたような印象であるが、花の多さはうれしい。野に咲くホタルブクロは白が多いような気がする。田のあぜ道によくこの花が咲いていた。夕ぐれになると蛍が飛び交い、その脇のあたりこの花が咲く。女の子どもたちはこの花の中にホタルを入れて、そっと手で包んだ。花のなかでホタルが光るのが、手のなかに見える。幻想的な感じがする。
こんな子どもたちの遊びが、この花の名の由来である。
夕風に蛍袋のひとかたまり 細見 綾子
梅雨時の山道で、白く咲くホタルブクロの花に出会うことがある。細長い釣鐘を下げたような花の形である。花の名には疎く、大抵は花をよく知る人からその名を教えてもらう。だが聞いたその場で、花の名など忘れてしまうことの方が多い。何故花の名を知ろうとするのか自分にも理由はよく分らない。
ホタルブクロは珍しく忘れない花の名だ。女の子たちの遊びと名がつながっているせいかも知れない。しかし考えて見ても、そんな遊びをいつ、誰としたのか記憶は霞んで思い出せない。白い花にすこしゴマのような斑点がついていたような気がする。