蝉の鳴き声が消えて、とって代わるように草むらに虫の声が聞こえている。もう生らなくなったキュウリの木を倒して、草むらに捨てたときコウロギが動くのを見かけた。今年の夏は劇的に終わり、秋雨が続き部屋に吹き込んでくる風はすでに冷たい。
切々たり暗窓の下
喓々たり深草の中
秋の天の思婦の心
雨の夜の愁人の耳
「喓々たり」とは虫がすだく声を現している。『白氏文集』に収められた絶句である。虫の声を聞きながら、戦場に赴いた夫を案じる妻の心である。日本の王朝では、訪れる夫を待ちわびる婦人に聞こえる虫の声は、婦人の泣き声に重ねられた。
いま、そんな古代のことははるかな歴史に埋もれてしまったが、虫の声を聞くとなぜか秋の寂しさを呼び起こされるような気がする。
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