玄関の窓でアブラゼミの大きな鳴き声が室内に響いてきた。みると、窓の敷居に止まって、羽を震わせながらしきりに鳴いている。蝉が鳴くのは、異性を求めるためだが、こんな緑もない殺風景な場所で求愛しても、寄ってくる異性はいないのでないか。写真に収めてからポトスを植えた鉢に止めると、籠の間に挟まってすざましい勢いで羽を震わせ高音で鳴く。暴れてみても狭い隙間から脱出することができない。そっと鉢を持ち上げて、蝉を自由にさせ手で押さえて、窓から外に放す。セミは勢いよく飛び去った。
ひたぶるに喚きの蝉を耳にあて 中村草田男
アブラゼミのジイ・・・と油の煮えるような声は、夏の暑さをいや増しにする。運動をせずに汗ばんでいた身体からさらに汗が滲んでくる。