牽牛と彦星が、7月7日の夜に、年に一度の逢瀬を持つというのは、中国の説話である。この話が我が国にも伝わり、天の河の星を見ながらこの二星の出会いを想像しながら、歌を詠むののは、宮中の宴での風流な遊びであった。
我が恋を夫は知れるを行く舟の 過ぎて来べしや言も告げなむ 万葉集・1998
年に一度しかない逢瀬。待ちに待った夫が、通り過ぎてしまった。しかも言伝もなしに。このような状況設定は、女心の切なさ、やるせなさをいやがうえにも増幅させる。この歌は柿本人麻呂が詠んだものである。歌の意を記せば、私の恋の辛い思いをあの人は知っている筈なのに、沖を行く舟のように、ここに寄りもしないで行ってしまうなんていうことがあってよいものでしょうか。せめて言伝てだけでも欲しい。
街の通りには、竹を切って軒端に立て、短冊に願いを書いたものをその枝に吊るす風景があちこちに見受けられる。