夕方に畑で草取りをすると、蚊がまとわりついてくる。半そでで手を出していようものなら、あっという間に、3、4箇所刺されている。すでに、毒がまわって腫れてかゆくなるが、ここで搔かずにがまんすることが肝要である。かゆみを我慢して10分、腫れは少し広がっている感じだが、かゆみは消えている。搔くことで新たなかゆみが出て、がまんができず、皮膚を搔きこわす結果になってしまう。
鳴きもせでぐさと刺す蚊や田原坂 漱石
明治30年、漱石は西南戦争の激戦地であった田原坂を訪れている。この年、漱石は熊本の第五高等学校の教師に赴任している。その折に、戦場を見に田原坂を訪れたのであろう。今は古戦場の史跡となっているが、当時はまだ激戦の跡が生々しく残されていたであろう。西郷軍の抜刀隊が、蚊の針のぐさりと刺すことを連想させている。
雨は降る降る 人馬は濡れる
越すに越されぬ 田原坂
右手に血刀 左手に手綱
馬上ゆたかな 美少年
田原坂は、こんな民謡に唄われ、西南戦争を偲ぶよすがとなっている。