朝の山形は雲ひとつないが広がっている。地上近くに霞のようなものがあって、その青がグラデーションを帯びながら微妙に色合いを変えている。地上凡そ400mの標高からみている。この朝の時間にしか見ることができないすばらしい景観である。松の木の向こうに市内のビル群が、小さく姿を見せている。上空は高気圧に覆われて、雲ひとつない。
だが、ところによって夕立の予報が出ている。上昇気流に起因する夕立は、局地的で同じ市内でも降るところそうでないところが斑模様に分けられる。「夕立は馬の背を分ける」と言われるほどで、馬の背でも片側は濡れ、反対側は濡れないという言葉さえある。
渓は降り天に御岳の夕立晴れ 水原秋桜子
最近の天気予報は、精度が上がったような気がする。午後6時ころになって、空に不気味な黒い雲が広がり、遠い雷鳴が聞こえ出した。テレビでは山形地方に竜巻が起きる可能性があると報じた。この警報は午後7時10分まで有効とのことである。やがて涼しい風が吹き始め、ベランダの戸を開けていられないほどの突風が吹き始めた。数えきれないほど稲光が垂直に走る。空を見ると、黒い雲から垂れ下がった形をした雲も見える。やがて激しい雨が降り出す。夕立などという言葉では表現できないような雨だ。7時10分、あれほど激しい風が止み、いつしか雨は小降りになった。