昼が一番長い夏至が過ぎると、自然界にはさまざま現象が起きる。暦でその現象を、びっくりするほど的確に表わしているのが、72候だ。夏至の初候は、鹿の角解つ。この時期は、全年に出た角が落ちて、新しい角が生えてくる。次候は、蝉初めて鳴く。さらに、末候が、半夏生ず。この時期に半夏という植物がその形を現す。半夏という植物はドクダミ科の多年草で、夏になると葉の一部が白く変色する。化粧を中途半端にしたので、こう呼ばれているらしい。
水がめに虫のわきたり半夏生 上村 占魚
農家にとってこの時期が大事な見極めの季節であった。田植えをこの時期までに終えるとか、梅干の梅はこの時期を過ぎてからのものを用いるとか、麦の収穫時期などに合わせたさまざまな風習がある。今日が半夏生で、この一週間後が小暑である。いよいよ本格的な暑さの夏まで、指折り数えるところまで来た。