葡萄がおいしい季節である。最近、品種改良が進み、多くの高級品種が生まれている。詩吟で吟じる詩に「涼洲詞」があるが、初句に「葡萄の美酒、夜光の杯」とブドウ酒が出てくる。葡萄は漢代に西域から中国に入ってきたものだが、涼洲は今の甘粛省で、その西域と境を接している。夜光の杯は恐らくワイングラスであろう。初めて葡萄を食べた中国の人々は、異国の珍果を喜び、それで醸造した酒に異国情緒を味わった。
明の李夢陽に「葡萄」とその名もずばりの詩がある。
万里の清風雁過ぎる時
緑雲玄玉影参差たり
酒酣にして試みに氷玉を取りて噛めば
天南に茘枝有るを説くかず
玄玉は葡萄の黒い玉。緑の葉陰にびっしりと葡萄に玉が並んでいる。氷玉は清らかでつやのある玉。ここでも葡萄をさしている。茘枝は南方特産の果物で、かの楊貴妃が好み、華南省から早馬で運ばせたことで有名である。葡萄はその茘枝とも比べものにならないほどおいしいと絶賛している。