
黒伏山は標高1227m、けして高山とはいえないが、東北最大級の岩壁のあるアルピニストに親しまれてきた山だ。黒伏高原登山口から、黒伏山本体まで、山すそを巻くような山道は長く、体力を消耗する。山のベテランといえども侮ることのできない山である。天候は快晴、昨日まで強かった風も収まり、最高の登山日和と言える。本日の参加者7名、内男性3名。山すその登山道で、沢の残雪で、一時道を見失ったものの、30分ほどのロスで黒伏山への分岐に到着。
南壁の頭への急斜面にとりつく。それまではさほどの高度も稼いでいなかったので、メンバーにはまだまだゆとりが見えた。所々木の隙間から、丸い形をした黒伏山の初夏の緑が輝いている。急峻な坂を3分2ほど登ったところでアクシデントが起きた。仲間の一人が急坂で、安全のため、木の枝に掴んだところ、身体を捻り、腕に痛みを訴え動けなくなった。
安全を確保しながら、ここで相談して出した結論は、ただちに登頂を断念。すぐに全員で力を合わせてこの人を無事に下山させることであった。幸い腕以外は丈夫であったので、男性3名で安全を確保ながら急坂を脱出。傾斜の緩んだ地点かからゆっくりと自力で下山が可能になった。担当のMさんの発案で、下山距離の短い遅沢口に下山、車を置いてある黒伏高原へ下山したOさんと合流。午後2時、ここで遅い昼食となった。
撤退からの教訓。アクシデントにパニックにならず、全員が意志をひとつにしたこと。チームの絆はこのできごとでさらに深まったように感じる。反省すべきこともたくさんある。事前の登山道の状況の周知、チームとして歩行スピードをコントロールするなど。安全な登山には、もちろん個人としての準備とともにチームとしても考える必要がある。どの山登りにも発せられている「ゆっくり登れ」という言葉を、この機会にさらにかみしめていきたい。
