真夏日を記録するようになって一週間もたつだろうか。6月の末から7月の初めにかけて、こんな猛暑を経験するのは初めてだ。体が暑さに慣れていないことも、暑さに滅入る原因になっている。求めるものは冷たいもの。冷蔵庫で冷やした冷たい水。アイスクリーム、ソーメン、冷やし中華、そして極めつけは夕食時のキンキンに冷えたビール。ある知人は、冷たい水は体に悪いので、水はお湯にして飲む、話す。とても信じられないことだ。食事を作ろうと台所に立つと、まだ火を使っていないのに、まるでガスで煮物をするような暑さだ。クーラーを入れればとも思うが、時おり部屋に入ってくる風に癒されて、こんなに暑くてもクーラーのスイッチはまだ入れない。
白居易の詩に『苦熱』というのがある。
頭痛み 汗巾に盈つ
連宵 復た晨に達す
苦熱に逢うに耐えず
猶お頼れるは是れ閑人
白居易はこの詩を作った年、官職を辞し、閑適の生活に入っている。暑さに苦しみながらも、詩の後半では暑さのなか農作業を行っている人たち思いやってもいる。もちろんこの時代、クーラーなどというものはない。庭に樹を植え、緑陰をつくのが当時の涼を得る方法であった。木陰に入り、そこを通る風に吹かれながら、書を読む。これば、白居易の求めていた閑適の生活であった。