お隣から紅花の切り花をいただいた。亡くなった母の墓前に飾って欲しい、と口上つきである。そういえば、失念していたが、今年も紅花が咲く季節である。紅花は清明に種を蒔き、半夏生のころ主枝の先頭から咲き始める。この花が末摘花と呼ばれる所以である。源氏物語の「末摘花」の条は、この花がモチーフになっている。
まゆはきを俤にして紅粉の花 芭蕉
奥のほそみちの旅で、芭蕉が紅花商人である鈴木清風を訪ねたのは、元禄2年5月17日、紅花の初摘み祝の翌日であった。清風は遠路をきた芭蕉をもてなしたであろうが、朝露の中で咲く紅花畑を案内したであろう。花の形を見れば、化粧道具の眉刷毛を連想することは容易である。