梅雨明けが現実のものになって、菜園では実物野菜が採れ始めた。ズッキーニがカボチャの仲間であることは広く知られているが、本家のカボチャには、食べる前の形や色に感動的な美しさがある。武者小路実篤が絵に描いて誰もが知っていることだが、自然の造形の神秘さにはいつも驚かされる。元なり、末なりという言葉があるが、枝が伸びて最初に花をつけたところにつける実が元なりで、末なり枝の先の方の実だ。採れる場所で味は異なり、元なりの次の二番なりが、上とされている。「うらなり、かぼちゃ」という囃しことばはちょっと足りない間抜けものに対して使われきた。
戦後、食糧難の時代に、米の代用食として食卓にのぼったのはカボチャだ。小学校の弁当の時間に、校長先生が皿に煮たカボチャを山盛りにして食べていたのを今も思い出す。そんな時代の記憶が、囃し言葉を生んだ背景である。しかし、飽食の時代になって大いに見直されているのがカボチャだ。黄色い果肉は、多くのベータ・カロテンを含み、そのカロテノイド色素は、医学の研究によって抗がん作用があることが明らかになっている。
カボチャと同様の力を持った野菜は、ニンジンとサツマイモだ。カボチャを一年中食べるのは無理でも、ニンジンやサツマイモを交互に食べる機会を増やせば、ガンのリスクは半減される。今朝、収穫した坊ちゃんカボチャを味噌汁にして食べた。実は半分以上汁に溶け込んで、黄色な味噌汁になったが、充分においしい味噌汁になった。
丸元淑生の『スープ・ブック』から、カボチャのスープを紹介する。カボチャ1/2個、牛乳、黒コショウ、塩いづれも適量。小さく切ったカボチャを少量の水で蒸し煮。煮えたカボチャをミキサーにとり、牛乳を加えながらぽってりとしたピューレにする。鍋にもどして弱火にかけ、コショウと塩で味をつけて出来上がり。ピュアなカボチャの甘さが感動的だ。
かぼちゃ咲き貧しさがかく睦まする 能村登四郎