常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

コキア

2019年07月25日 | 日記

梅雨末期、昨日は24節季の大暑であったが、激しい夕立に見舞われた。他所の畑で栽培されているコキアの緑が一段と濃くなった。秋、美しく紅葉するのが楽しみだが、この緑も悪くない。コキア、昔呼びなれた名はホウキ草である。枯れた枝を束ねて、庭を掃くホウキに利用した。それよりも、熟した実をトンブリにして食べた。農家では、実を食べるくらいどこの家でも栽培していた記憶がある。

隣室に人は死ねどもひたぶるに箒ぐさの実食ひたかりけり 斎藤茂吉

斉藤茂吉は、トンブリが好物であった。明治42年に、腸チフスで入院したときに詠んだ歌である。当時、腸チフスと云えば大病、いったん患えば生還が危ぶまれた。そんな、死と隣り合わせの病室で、茂吉はしきりに好物のトンブリを食べたいと思った。この歌には、茂吉自身の命への哀惜の感情が流れている。

トンブリは畑のキャビアと呼ばれている。飢饉の年、秋田でホウキ草の実を加工して、トンブリにした。その食感は、プリプリとした歯触りで、魚のタマゴを思い出させる。トロロイモとの相性がよく、すりおろしたトロロにトンブリを乗せて食べる。秋田の郷土食となっていて、秋田を旅した人は、この食材に出会っていることであろう。

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