温泉宿の土産に温泉饅頭を選ぶことが多い。もう日本人の暮らしにすっかり溶け込んだ饅頭であるが、起源をたどると興味深い話題に行きあたる。中国の三国志の英雄諸葛孔明(没234年8月23日)が、奇しくも饅頭の発端である。劉備の陣に参じ、蜀王朝の成立に功績があった孔明あるが、孟獲を征服したとき蛮神を祀る必要があった。
その祀りの習わしでは、人身御供として人の首を供える風習があった。孔明はこの野蛮な風習を止めさせ、代わりに羊の頭を供えさせた。この習慣が後世には中に肉の餡ををつめた麺の饅頭になった。今でも中国の饅頭は肉饅が主流である。孔明が蛮神を祀った名残は、連綿として中国の食文化に息づいている。
日本に饅頭が伝わったのは、南北朝のころである。京都の建仁寺の35世龍山禅師が留学から帰朝した。妻帯して奈良に住んだが、中国で覚えた饅頭を作った。これが「奈良まんじゅう」のはじまりである。だが、日本では肉食が禁じられたいた。そこで肉の代わりに小豆のアンコを使った。
身は未だ昇騰せざるに退歩を思う
功成りて応に憶うべし去りし時の言
只だ先主の後を丁寧するに因りて
星は落つ秋風五丈原 (土井晩翠)
偉人が世を去るとき、「巨星落つ」の表現が用いられるが、孔明の死に際して用いられたこの詩がその源である。先主から後を頼むの願いを聞いたために、この戦場である五丈原で没することになってしまったのである。234年8月23日のことであった。
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