4月5日は、ポカポカとした天気。明日は、嵐になるとの天気予報。
「今日の内に、桜見とかなきゃ!」と、ミモロは、昼過ぎ、お友達が乗ると言う舞妓さんの舟を見に、疎水へと出かけました。
「あ、あの舟かな?」
疎水の遊覧船の「十石舟」の舳に、舞妓さん。ミモロは、手を振りますが、誰も気付いてくれません。
「あーあー行っちゃったー」と、舟を名残惜しそうに見送ります。
「ミモロも舟に乗りたかったなぁー」と、ちょっと残念そう。
「でも、今年の疎水の桜は、本当にキレイ!」毎日見ても、飽きることがない景色。
「すごーい!」と、疎水沿いの桜に感激する観光客を見ると、「そうでしょ、そうでしょ!」と、自分の庭を褒められたようにうれしくなる、この岡崎地区住民のミモロです。
さて、陽が西に傾き始めた頃、「さぁ、今年の桜の見納めをしよう!」と、イソイソと平安神宮へ向かいます。
「ウワーすごい桜…」社殿の屋根には、紅しだれがこんもり。まさにあふれんばかりの花を屋根にこぼしています。
ミモロは、お気に入りの振袖姿。手にはわざわざストールを持って神苑に。なんで、そこまで正装するの?
一歩はいると、そこは、桜の園。大きな紅しだれが、枝をたらし、目の前にピンク色の世界が広がっています。
ミモロは、艶やかな紅しだれを前にポーズ。
「これーやってみたかったのー」と。ミモロが振袖姿なのは、谷崎潤一郎の「細雪」のラストシーンを再現するため。4姉妹が、晴れ着を着て、桜の中を歩くシーンです。
ミモロの気分は、すっかり「細雪」のお嬢様。ストール片手に、桜の園をしずしずと歩きます。
さて「細雪」は、東京出身の作家、谷崎潤一郎が、戦時中、疎開先の河口湖で執筆を始め、京都鴨川沿いに移り住み昭和23年に完成した長編小説。大阪船場の老舗の四姉妹の波乱に富んだ人生を、谷崎らしい優美な文章で綴っています。時代を代表する女優達の出演により、今までに3回映画化され、なかでも市川崑監督、岸田恵子、佐久間良子、吉永小百合、古出川祐子出演による1983年の東宝映画が、記憶に新しい作品です。
そのラストシーンの撮影は、紅しだれが咲き誇る「平安神宮」の神苑。美しい晴れ着姿の、美人四姉妹が、桜の下を歩く姿は、なんとも優美。映画を見た女性たちの憧れに…。当時、桜の下を着物で歩くのを「細雪ごっこ」と、呼んで、一部女性たちの間で流行ったもの。
ミモロも、それに憧れての振袖姿。そして映画の姉妹たちの手には、ストールがあったのです。
ミモロの周りは、桜だらけ…。すっぽりと紅しだれの花に抱かれたような心地に。
「この景色が見たかったんだー」すでに、一部散り始めた紅しだれ。緑の苔の上には、ピンク色の花びらが…。その風情もなんともステキです。
カジュアルなスタイルの観光客が多い中、ミモロの振袖は、目立ちます。
「あら、クマちゃんが着物着てるーどうしたの?」と、そばの年輩の女性グループに尋ねられました。
ニッコリ微笑みつつ…「見て、わかんないかなぁー『細雪』なのにー」と、心の中でつぶやくミモロ。
ミモロの意図は、どうも他の人には、わからなかったよう…。
「やっぱりお友達誘って、4人で歩かなきゃ、わかんないかも…」
次回の桜の時期には、お友達3人を誘おうと、ひそかに思うミモロです。
周囲の声にもめげず、ミモロは、『細雪』気分のまま、神苑をめぐります。
歩く先には、次々に桜が、この春の最後を飾るように、美しさを競います。
池は、桜色に縁どられているよう。
「やっぱり紅しだれは、京都に似合うねぇー」
ソメイヨシより、細く長い枝に花をつけた紅しだれ。花の重さで、いっそう枝は垂れ下がり、風にそよぐさまは、なんとも艶っぽく、京おんなをイメージさせる姿です。
ミモロも、京都の水に洗われて、少しは艶っぽいネコになったでしょうか。
池に掛る屋根付きの橋、「泰平閣」からの景色は、何度見ても、決して飽きることがない美しさ。
欄干にもたれ、過ぎゆく春を心に刻むミモロです。
「今年も十分に楽しませてもらちゃったー」
存分に、今年の桜を堪能したミモロ。その顔は、満足感にあふれています。
人気ブログランキングへ
ブログを見たら、金魚をクリックしてね