一昨日、映画「HOKUSAI」を、「T・ジョイPRINCE品川」で観てきました。
この映画は去年5月にクランクアップしたものの、コロナ禍で公開が延期され、一年後の今年5月28日にようやく全国公開されました。
企画・脚本は河原れん、監督は橋本一、主演は北斎役の柳楽優弥と田中泯、他に芦屋重三郎役の阿部寛、柳亭種彦役の永山瑛太、喜多川歌麿役の玉木宏、妻コト役の瀧本美織など、豪華メンバーが出演しています。
話は天才浮世絵師・北斎の青年期、壮年期、老年期に章分けして進みます。絵を描きたいことは分かっていても、何を何のために描くのかも分からず、他の浮世絵師に嫉妬したり、版元の芦屋重三郎の厳しい指摘に傷ついたりともがく青年期。苦しんで旅に出た先で海に身を浸すうちに、波を主題にした絵が自分の絵だと悟り、江戸に戻って作画に取り組み、人気を博す。
壮年期には風景を描く浮世絵の他に読本挿絵や漫画にも取り組み、その時代に武家の出の戯作者・柳亭種彦にも出会う。
老年期、妻コトを亡くした北斎だったが絵を描く意欲は衰えず、今描きたいものを求めて娘のお栄を残して旅に出て、海の先に見える富士山、峠道の頂上で目にした赤く染まった富士山を自分のモチーフに加えて江戸に戻り、作画を重ねる。やがて「ベロ藍」に出会い、自分が描く波の色が決定付けられる。
そんな折、柳亭種彦が市井の風紀の乱れを嫌う江戸幕府(水野忠邦・天保の改革)に目を付けられ、筆を折るよう迫られるのを断って、命を絶たれてしまう。種彦の訃報を聞いた北斎は深い喪失感の中、「生首図」を描き上げる(この部分は仮説のようです)。
映画は、青年期・壮年期を演じた柳楽優弥と老年期を演じた田中泯が並んで「男波」と「女波」を描き上げるシーンで終わります。
というわけで、個性溢れる天才浮世絵師・北斎の生涯を、個性溢れる脚本家、監督、俳優たちと、脇を固めるアドバイザーや美術・音楽の担当者等々、大勢の人たちがものすごい熱量を結集し、大胆に、ち密に、色彩豊かに描き上げたこの映画は、見るものを圧倒し、深い余韻を脳裏に刻み込む、凄い作品でした。
まだまだ外出がためらわれる状況ですが、折を見て是非見ることをお勧めします。(ちなみに、入館には検温と消毒、館内は半分の座席しか座れないようになっている上、結局入ったのは10人前後。スクリーンを独占状態で、見やすくて良かった!)(三女)