昨日は、サントリー美術館で開催中の「逆境の絵師 久隅守景 親しきものへのまなざし」展を見てきました。
久隅守景という人物のことを今まで全く認識していませんでしたが、江戸時代初期、狩野探幽に師事、探幽門下四天王の筆頭と目されるまでになった絵師だとのことです。
一方、2人の子供のうち、娘は探幽の弟子と駆け落ちをし、息子は佐渡へ島流しになるなど、身内の不祥事が続いたため、守景自身探幽のもとを離れることになったのが、今回の「逆境の絵師・・・」というタイトルになった理由のようです。
作品は「逆境」というイメージとは異なり、温かみがあってどことなくユーモラスな作風。広々と伸びやかな配置の中に、農村で働く人々の生き生きとした日常風景が描き出されている屏風絵などは楽しくて、じっくり見ていて飽きません。
風景画の楽しさの一方、花鳥画の繊細さ、品の良さにも特別なものがあります。いずれにしても、どの作品も暗い影が全く感じられない、人の心を和ませ、元気付ける力がありました。
不祥事があったとされる二人の子供も、実は絵師として素晴らしい才能を開花させています。
左は娘・清原雪信の「観音図」、右は息子・彦十郎の「鷹猫図屏風」の中の「猫」の部分。父親の繊細さ、品の良さは娘に、温かみとユーモラスさは息子に受け継がれたのでしょうか。そんな子供達の恵まれた才能を知っていたから、守景の作風は「親しきものへのまなざし」を感じさせるものだったのかもしれませんね。
曇り空の午後のひと時、外歩きより美術展かな、と軽い気持ちで行ったのですが、江戸時代の暮らしの大らかさや日本美術の素晴らしさを再認識したという意味でも、見ていて自分自身が豊かな気持ちになれたという意味でも、行った甲斐があった展示会でした。(三女)