
1月27日~29日、夫と2人で倉敷旅行をしてきました。去年の秋に次女が倉敷に行った時の旅行記にあった、美観地区の趣きある雰囲気や国内外の素晴らしい絵画がゆったり見られる大原美術館の様子に心惹かれて、是非行きたいと思って実現した旅です。



倉敷に3時前に到着。宿は駅から徒歩10分、美観地区のすぐ近くにあるロイヤルアートホテルという、とてもすっきり綺麗なホテルです。宿に荷物を置いて、さっそく美観地区の様子見に出かけました。
倉敷川沿いに、江戸・明治初期の町家や富豪の広大な屋敷、美術館などが並んで、独特の雰囲気を醸し出しています。町家は今はほとんど土産物屋さんか食べ物屋さんになっています。せっかくなので雑貨屋さんでジーンズ地の買い物バッグを買い、和菓子屋さんで吉備団子を食べてみました。



夜は岡山在住の友人と倉敷駅近くの居酒屋さんで食事会。牡蠣鍋やママカリなど瀬戸内の幸とお酒を味わいながら、岡山の歴史や文化、倉敷界隈の見所を教わったり、時に今の政治や社会情勢について嘆きあったりして、楽しい時を過ごしました。
+++



28日は朝から素晴らしい晴天。穏やかな春のような陽気になりました。前日の友人のお勧めに従って、午前中はタクシーで吉備路を巡ることにしました。
左右に広がる田んぼを眺めながらよく整備された道路を30分ほど走ると五重塔の落ち着いた姿が見えてきました。備中国分寺の五重塔で、天平時代に創建された高さ34.32mの塔は重要文化財に指定されているとのこと。住民もその景観を大切にし、春には周囲のたんぼにレンゲを植えて更に美しい風景にしているということでした。



次に行ったのは造山古墳。5世紀前半に吉備を支配した権力者の墓といわれるこの古墳は、国内で4番目の規模の前方後円墳です。前の方形の部分と後ろの円の部分の間には桜のが植わった小さな林があって、全体として調和のとれた穏やかな空間になっていました。



前方部の頂上には神社や石棺、石棺の蓋の一部があり、蓋に施された直弧文という彫刻には文化的に深い意味があるそうです。


山頂で石棺などの説明文を読んでいるときに、たまたま地元の彫刻家で直弧文の研究者という方にお会いし、この古墳の構造やそこから読み取れる当時の文化の話、吉備界隈の地形や歴史の話などを丁寧に説明していただくことになりました。この方は山麓の駐車場に置かれているモニュメントの作者でもあるとのこと。黒い立派な屋根瓦が並ぶ古きよきものを大切にする地元村落を愛して止まない様子が伝わってきました。



次に行ったのは昔話「ももたろう」の原形といわれる「温羅伝説」の地として知られる鬼城山(きのじょうざん)です。
標高約400mの鬼城山山頂一帯に、土塁や石塁が巡らされた古代の山城で、実物大で復元された西門を入ると、水門や礎石建物跡などを見ながら山頂付近を歩くことができます。友人によると、朝鮮式山城としては日本で唯一と言ってよいくらいの遺構で、古代の吉備王国や大和地方には、朝鮮文化の影響が色濃くあったことを示すものだということでした。
これで吉備巡りは修了。好天気に恵まれた中、頭も身体も動かして、実に快適な社会科見学ツアーでした。



美観地区に戻って、運転手さんお勧めのうどん屋さんでランチ。沢山歩いた後の地ビールも、腰のある手打ちぶっかけうどんもとても美味しかったです。
さらに、ガイドブックで熱烈お勧めの「くらしき桃子」というスイーツ店で、ももこパフェも味わって、桃の美味しさに納得しました。


いよいよ倉敷訪問の最初の目的、大原美術館に入りました。1930年に実業家大原孫三郎によって設立されたこの美術館は、広い敷地内に本館、分館、工芸・東洋館を配し、洋画家小島虎次郎と共にヨーロッパやエジプト、中国、朝鮮半島を訪れ、東西の優れた美術作品を収集展示しています。



本館にはエル・グレコ、モネ、ゴーギャン、セザンヌ、ギュスターヴ・モローなど、見慣れた画家の画が沢山あります。(今回は春めいた雰囲気に合わせて、淡い色合いのシニャック「オーヴェルシーの運河」、ボナール「欄干の猫」、藤田嗣治「舞踏会の前」をご紹介。)
分館の岸田劉生の童女舞姿、工芸館の棟方志功の作品群などもあり、人が多すぎない中でこうした作品をゆっくり味わえて幸せでした。



夜は、これ又昼間のタクシーの運転手さんご推薦の、ホテル近くの割烹「いわ倉」へ。ビールと日本酒と、瀬戸内の珍味で倉敷最後のひと時をゆっくり楽しみました。
温暖な気候のせいか、元々が豊かな地方のせいか、高い文化と人々の穏やかな人柄がかもし出す心地よい町の雰囲気を充分に堪能し、期待以上に充実し、満足した2泊3日の旅でした。(三女)
