咲きにけり岩井のみづ にかげみえて三千年(みちとせ)になる桃のはつ花(永久百首)
わがそのの桃のはつはな咲きにけり三千代(みちよ)過ぐべき春のしるしに(永久百首)
桃の苑くれなゐにほふ桃のはな 下照る道にいでたつ乙女(万葉集)
くれなゐに白きはな咲く苑(その)の桃 むべ山がつもこころありけり(草根集)
ひと来(く)やと真屋(まや)の軒ばのしばがきに立ちかくれたるひめ桃の花(新撰和歌六帖)
夕づ く日さすや岡べの桃のはな 空もうつろふ色に見えつつ(永久百首)
咲きにけり岩井のみづ にかげみえて三千年(みちとせ)になる桃のはつ花(永久百首)
わがそのの桃のはつはな咲きにけり三千代(みちよ)過ぐべき春のしるしに(永久百首)
桃の苑くれなゐにほふ桃のはな 下照る道にいでたつ乙女(万葉集)
くれなゐに白きはな咲く苑(その)の桃 むべ山がつもこころありけり(草根集)
ひと来(く)やと真屋(まや)の軒ばのしばがきに立ちかくれたるひめ桃の花(新撰和歌六帖)
夕づ く日さすや岡べの桃のはな 空もうつろふ色に見えつつ(永久百首)
あはれとも今日こそ桃のはなざかり上(かみ)の巳(み)の日と誰れさだめけむ(夫木抄)
唐(から)ひとも舟をうかべて遊ぶてふ今日ぞわがせこ花かづ らせよ(新古今和歌集)
ゆく水に浮かべる花のさかづ きやながれてきよきためしなるらむ(夫木抄)
さらばまたやよひ三日(みか)の月のかげ 早(は)やさしそへよ桃のさかづ き(為尹千首)
めぐりくる弥生も久し三千年(みちとせ)になるてふ桃の花のさかづ き(夫木抄)
みちとせの数にもめぐれ春をへてたえぬ弥生の花の杯(新撰和歌六帖)
あさみどり染めかけたりと見るまでに春のやなぎは萌えにけるかも(万葉集)
あさみどり乱れてなびくあをやぎの色にぞ春の風も見えける(後拾遺和歌集)
あさみどり染めてみだるる青柳の糸をば春の風やよるらむ(新勅撰和歌集)
染めかくる色ははなだの糸はへて行く道はらふ青柳のかげ(草庵集百首和歌)
うちなびき春さりくれば道のべに染めて乱るるあをやぎの糸(新拾遺和歌集)
水のうへにかげうちなびくあをやぎを波のあや織る糸かとぞ見る(古今和歌六帖)
池のおもの波のあや織る春かぜに糸くりいだす岸のあをやぎ(天正五年親王家五十歌)
春雨に芽ぐむやなぎの浅みどりかつ見るうちも色ぞそひゆく(風雅和歌集)
春はまづなびきにけりな佐保姫の染むる手引きのあをやぎの糸(続千載和歌集)
佐保姫の糸そめかくるあをやぎを吹きなみだりそ春のやま風(詞花和歌集)
春きぬとつげの小櫛(をぐし)もささなくに柳の髪をけづる春かぜ(土御門院御集)
こほりせし山の垂水(たるみ)の音(おと)たてていまはるさめも岩そそくなり(蓮性)
水のおもにあや織りみだる春雨や山のみどりをなべて染むらむ(新古今和歌集)
ふして思ひ起きてながむる春雨に花のしたひもいかにとくらむ(新古今和歌集)
春雨の花の枝よりもりてこばなほこそぬれめ香ににほふべく(後撰和歌集)
つくづ くとはるさめそそく軒ばよりしのぶづたひにおつる玉水(守覚法親王)
静かなるやどのながめの友なれやしづく落ちそふ軒の春雨(伏見院御集)
降りにけりな音(おと)にはたてぬ春雨の見れば草葉の上ぞぬれゆく(伏見院御百首)
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雨ふりて小夜(さよ)は更(ふ)くともなほ行かむ逢はむと妹(いも)にいひてしものを(古今和歌六帖)
人を待つほどは心もはれやらでくらしぞかぬる春雨の空(前摂政家歌合)
逢ふことのかた糸なれば白玉のをやまぬ春のながめをぞする(古今和歌六帖)
春雨のふるにおもひは消えもせでいとどなげきのめをもやすらむ(古歌)
御狩野(みかりの)にまだ降る雪は消えねども雉子(きぎす)のこゑは春めきにけり(夫木抄)
もえそめて幾日(いくか)もあらぬ初草のあさ野の原にきぎす鳴くなり(夫木抄)
もえいづる若菜あさると聞こゆなりきぎす鳴く野の春のあけぼの(山家集)
妻恋ひのきぎす鳴くなりあさがすみ晴るればやがて草がくれつつ(六百番歌合)
春日野の若草山に立つきじのけさの羽音に目をさましぬる(夫木抄)
春日野にあさるきぎすの妻恋ひにおのがありかを人に知れつつ(拾遺和歌集)
こころから妻恋ひすらし逢ふことのかた野のきぎす音(ね)に立てて鳴く(夫木抄)