池田重子の「春のおしゃれ」(実業之日本社)を読んでいたら、この本にも、文字が刺繍された着物が紹介されていました(158ページ)。
本には『裾には自作の歌か、「鶯きぬとはおもふものから藤の花 宿に咲きける春ぞひさしき」と読める水茎の文字を散らした藤鼠色の三つ紋付のきもの。』と書いてあるのですが、和歌にしては、どうも字数が合いません。変だな~と思い、インターネットで検索してみると、「新古今和歌集」の以下の貫之の歌がヒットしました。
暮れぬとは思ふものから藤の花咲けるやどには春ぞひさしき
そこで、当該本の写真をよく見てみると、「鶯きぬ」と読んでいる文字は、「暮連ぬ」と読むべきもののようです。変体仮名「連」を「き」に誤って読んでいるのではないかと思うのですが。
ついでに書くと、「水茎の文字」ってなんか変な言い回しだな、と感じました。